民間介護保険(特約)は必要?おすすめの選び方を解説

国の介護保険制度がある中で、民間の介護保険(特約)に加入する重要性が高まりつつあります。
この記事では、特約を含む民間の介護保険や特約に加入する必要性について分かりやすく解説していきます。
民間介護保険(特約)の加入を検討している人のために、具体的な保険や特約の選び方も紹介します。
そもそも民間介護保険に加入する必要性はあるのか
40歳になると国の介護保険料を納める義務が生じますが、あくまでも民間の介護保険(特約)の加入は任意です。
「民間介護保険(特約)の必要性がないのではないか」という意見の根拠は、主に次の2つです。
- 介護状態になる人は少ないはず
- もし介護状態になっても公的介護保険があるから心配ないはず
詳しい解説に入る前に、介護保険における前提条件を押さえておきましょう。
介護保険とは
公的介護保険が適用されるのは、国が定める要介護・要支援認定の条件を満たした場合で、被介護者の身体状態などに応じて要介護・要支援認定の等級が異なっています。
厚生労働省の調査によると、要支援・要介護認定者は2016年度末で632万人います。
参考:厚生労働省|平成28年度介護保険事業状況報告(年報)概要
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/16/dl/h28_gaiyou.pdf
632万人のうち約619万人が第1号被保険者で要支援・要介護認定を受けた人の割合は、次の通りです。
人数 | 割合 | |
---|---|---|
65歳以上75歳未満(前期高齢者) | 75万人 | 約12.0% |
75歳以上(後期高齢者) | 544万人 | 約88.0% |
同調査で分かった介護認定の区分ごとの第1号被保険者の人数(男性と女性の合算)を次の表にまとめたので、チェックしてみましょう。
(単位:千人)
第1号 被保険者の 総数 |
要支援1 | 要支援2 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 | 総数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
65歳以上 70歳未満 |
44 | 46 | 54 | 54 | 36 | 31 | 29 | 294 |
70歳以上 75歳未満 |
77 | 72 | 86 | 78 | 53 | 46 | 40 | 452 |
75歳以上 80差未満 |
160 | 136 | 172 | 139 | 95 | 82 | 68 | 851 |
80歳以上 85歳未満 |
262 | 230 | 310 | 238 | 165 | 143 | 113 | 1,461 |
85歳以上 90歳未満 |
230 | 230 | 351 | 289 | 213 | 189 | 143 | 1,645 |
90歳以上 | 106 | 136 | 264 | 277 | 251 | 259 | 191 | 1,485 |

怪我や生活習慣病が原因で要支援・要介護認定される人が年々増えていることが同調査で分かっています。
調査年度 | 認定者数(千人) |
---|---|
2007年度 | 4,529 |
2008年度 | 4,673 |
2009年度 | 4,846 |
2010年度 | 5,062 |
2011年度 | 5,306 |
2012年度 | 5,611 |
2013年度 | 5,838 |
2014年度 | 6,058 |
2015年度 | 6,204 |
2016年度 | 6,320 |
上表から、要支援・要介護に認定されて何らかの介護が必要になる人が増加し続けていることが分かります。
そう考えていても、何が起きるか分かりません。
介護が必要になる人が増えている中、要支援・要介護認定を受けるリスクが高い傾向にあるため、民間の保険や特約が注目されているのです。
続いて、公的介護保険制度の保障をチェックしていきましょう。
公的介護保険制度が適用される介護サービスの種類は次の3つです。
- 介護サービス費用の自己負担の軽減(原則1割)
※所得によって2割または3割 - 高額介護サービス費制度
- 高額介護合算療費制度
介護サービス費用の自己負担の軽減(原則1割)
介護区分や被介護者の所得に応じて介護サービスの自己負担額が軽減される公的介護保険の制度です。
グループホームやケアハウスのショートステイなどの介護施設に通所して介護を受けたり、自宅まで介護資格があるヘルパーに訪問してもらったりなどの介護サービスが対象になります。
他にも、車いすや補聴器などの福祉用具のレンタル費用も介護サービス費用として認められています。
高額介護サービス費制度
高額介護サービス費制度は、先に紹介した自己負担額の軽減がされても、自分で支払う資金が高額になる場合に適用される公的介護保険の制度です。
被介護者本人や世帯の収入に応じて上限額が定められています。
高額介護合算療費制度
高額介護合算療費制度は、ここまでに紹介した制度を利用しても自己負担額が高額になる場合に利用できる制度です。
8月から翌年の7月までの1年間で、同一世帯で支払った介護費と医療費を合算して、基準を超過していた場合に払い戻しを受けられます。
払い戻しを受けられる基準は世帯の収入や被介護者の年齢によって異なっています。
では、具体的に公的介護保険はどのような費用がカバーできないのか次の章で解説していきます。
果たして民間の保険や特約に加入する必要はあるのでしょうか。
公的介護保険制度でカバーできない部分とは
国の制度である公的介護保険は、将来介護が必要になった場合に条件を満たせば保障が受けられますが、民間介護保険(特約)に未加入だと保障は十分とは言えません。
公的介護保険でカバーできず、民間の保険や特約で保障できる代表的な費用は次の2つです。
- 介護サービス費用以外に必要になる介護費用
- 64歳以下で介護認定された場合の諸費用
介護サービス費用以外に必要になる介護費用
介護サービス費用以外に必要になる介護費用の具体例は、次の通りです。
- 住宅改修費
- 日常生活費
- 病院や施設に行くための交通費
- 福祉用具費
介護をすることになった際、たとえば以下のような費用がかかることが予想されます。
- ベッドなどの寝具を新しくする
- 家に手すりを付ける
- 必要に応じて車椅子や松葉杖などの福祉用具を購入する
- お風呂に入りやすいように改築する
民間の保険や特約を賢く使えば、これらの費用をカバーできる可能性があります。
64歳以下で介護認定された場合の諸費用
国の介護保険制度は40歳で加入義務が発生しますが、40歳~64歳で介護が必要な状態になった場合は原因が特定疾病でないと保障が適用されません。
例えば、車の事故で要介護状態になっても、公的介護保険では保障が受けられない可能性があるため、自己資金で必要な費用を支払わなければいけません。
ここまでの説明で、介護が必要な状態になった場合に公的介護保険だけでは費用を賄うのは難しく、民間の保険や特約を賢く利用すべきだと分かりました。
続いては、介護の必要資金の相場を見ていきましょう。
介護費用の相場は
介護費用の相場はどれくらいか試算してみましょう。
介護に必要な期間は平均4年7か月で、月々の費用の平均は7.8万円で一時費用の平均額が69万円という調査結果があります。
これを基に、介護費用の相場を計算します。
参考:公益財団法人生命保険文化センター|介護にはどれくらいの年数・費用がかかる?
http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/nursing/4.html
平均的な介護費用を計算すると次の計算式になります。
公的介護保険の第1号被保険者の給付費は全国平均で、年間約25万円で月額2万円程度が給付されます。
参考:厚生労働省|平成28年度介護保険事業状況報告(年報)概要
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/16/dl/h28_gaiyou.pdf
単純に考えると公的介護保険で賄える介護費用は、2万円×4年7か月=110万円で、介護費用の自己負担額は498万円-110万円=388万円になるというわけです。
次に、民間の保険や特約の選び方を解説します。
介護保険や特約の選び方
民間の介護保険や特約はたくさんの種類があり、加入する保険や特約を選ぶのに困る人も多いので、保険を選ぶときの参考にしてください。
- 単独で加入するもの
- 別の保険に介護特約をつけるもの
口コミの評価が高くて人気の介護保険(特約)のランキングから選んだり、保険会社の経営状況で選んだりするのもひとつの方法です。
他に加入している生命保険や損害保険などと保障が重複していると、支払っている保険料がもったいないので、必要に応じて保険契約の解約の判断をすることも大切です。
- 保険期間を終身型にするか定期型にするか
- 受け取り方法を一時金にするか年金にするか
- 貯蓄性がある保険にするか
- 公的介護保険連動型にするか独自型にするか
介護保険(特約)の選び方について順番に解説します。
保険期間を終身型にするか定期型にするか
終身型
終身型にすると保険料が途中で変更されることはなく、一生涯の保障が得られます。
- あらかじめ決められた年齢まで積み立てて支払う方法
- 一生涯支払う方法
定期型と比較すると、終身型のほうが保険料は高く、保険や特約の見直しをするとデメリットが生まれやすいですが長期的な保障が得られる点が終身型の魅力です。
また、加入年齢が若いほど保険料が低い特徴があります。
定期型
定期型は、終身型よりも保険料を安く抑えられますが、給付金の受け取り期間が決められているだけでなく、保険契約(特約)を更新するタイミングで保険料が高くなります。
受け取り方法を一時金にするか年金にするか
民間介護保険や特約は、基本的に現金給付で受け取りができますが、受け取り方法は以下の3種類です。
- 一時金
- 年金
- 併用
一時金を選択すると、まとまったお金を一度に手にできる一方で、介護期間が長期化すると資金が不足するケースもあります。
年金として介護保険(特約)の給付金を受け取れば、介護期間が長引いても継続的に給付が受けられますが、保険料が高くなります。
貯蓄性がある保険にするか
年金保険や死亡保険が介護保険とセットになっている貯蓄型の保険に加入すると、要介護以外の状態になった場合でもお金が受け取れます。
介護保険(特約)の保険金支払い事由の具体例としては、被保険者が死亡したときや高度障害状態になった場合があります。
将来の介護に必要な資金を準備するだけでなく、いざというときのお金を用意したい人は貯蓄性がある保険の加入がおすすめです。
一方、保険料を抑えて必要な保障を確保したい人は、掛け捨て型の介護保険(特約)がいいでしょう。
公的介護保険連動型にするか独自型にするか
公的介護保険連動型は、保険金の給付条件が公的介護保険と連動している介護保険(特約)で支払い条件が分かりやすいですが、介護認定を受けるまでに時間が必要です。
認定されるまで保険(特約)の請求ができないので、その期間に発生した費用は自己資金でまかなわなければいけません。
独自型は、保険会社が定めた保険(特約)の条件を満たせば給付金が受け取れます。
保険(特約)の給付条件は保険会社によって異なりますが、公的介護保険連動型よりもスピーディに給付金が受け取れる傾向にあります。
介護保険(特約)はいろいろな種類があるので、気になる保険商品や特約で一度見積もりを出してみましょう。
民間の保険(特約)に加入すべき人の特徴
公的介護保険のサポートだけでなく、保障を手厚くしたい場合は民間の保険や特約の加入を検討すべきだと言えます。
国の制度だけでなく、民間の保険会社が取り扱う介護保険(特約)の加入を検討すべき人は次のような人です。
- 貯蓄や年金などで介護費用をカバーする余裕がない人
- 将来介護が必要な状態になったときに家族にかかる負担をできるだけ軽減したい人
- 介護が必要な状態になったときに世話をしてくれる子供がいない人
- 64歳以下で介護が必要な状態になった場合の準備ができていない人
一方、次のような人は民間の介護保険(特約)に無理に加入する必要性は低いでしょう。
- 介護が必要な状態になったときに面倒を見てくれる家族がいる人
- 将来必要になる介護費用を自己資金で十分賄える金銭的な余裕がある
まとめ
公的介護保険だけでは、将来の介護に必要な保障は十分とは言えません。
貯蓄や年金がどれくらいあるか、自分の健康状態はどうなりそうかなどを踏まえて、早めに民間の介護保険(特約)への加入を検討することが大切です。
日々の仕事や生活に追われて将来の対策が疎かになるのも分かりますが、自分の将来の備えだけでなく、親の介護保険(特約)にも目を向けて老後に必要な保険や特約を準備しましょう
保険商品のご検討にあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり」「約款」などを必ずご覧ください。
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