うつ病などの精神疾患の入院費用はいくらくらい?

うつ病をはじめとする精神疾患の場合でも、状態によっては入院が必要になります。
ここでは、うつ病で入院するケースと、うつ病で入院した場合にかかる費用の相場について解説しています。
この記事は5分程度で読めます。
自分だけでなく、家族など身近な人がうつ病で入院する可能性も踏まえ、費用に対する備えを考えておきましょう。
目次
うつ病で入院することはある?
うつ病などの精神疾患は、通院という形で長期的に向き合うことが多いです。
まずは、うつ病で入院する場合はどのようなケースが考えられるのか、またそのメリットについて詳しく見ていきましょう。
うつ病で入院するケース
うつ病で入院する場合、以下のようなケースが考えられます。
- 食欲不振などにより体が衰弱している
- 自傷・自殺を行う危険性がある
- 他の病気を併発している
- 家庭環境などが療養に適していない
これらについて、一つずつ見ていきましょう。
食欲不振などにより体が衰弱している
うつ病を患うと食欲が減退することが多く、通常は投薬や通院にて長期的に治療を行っていきます。
しかし、食欲不振の状態が続き、1人での食事が困難になったり、体が衰弱してしまったりする場合は入院での治療をすすめられることも少なくありません。
自傷・自殺を行う危険性がある
重度のうつ病を患っている場合、自傷行為や自殺企画・実行を図るケースもあります。
家族のサポートが受けられる環境であれば良いですが、1人で生活している場合など様子を見守る人が近くにいないときは入院が推奨されます。
入院することで病院側が24時間体制でサポートしてくれるので、1人では不安という方は検討してみましょう。
他の病気を併発している
うつ病以外の怪我や病気にもかかっている方は、入院して双方の治療をすすめるというのもおすすめです。
また、うつ病をきっかけに別の精神疾患を発症する可能性もあるため、症状の回復が遅い場合は相談してみると良いでしょう。
- 不眠症
- 自律神経失調症
- 適応障害
- パニック障害
- 依存症
など
家庭環境などが療養に適していない
うつ病はストレスなどの精神的な不調が原因となっていることが多く、回復のためには周囲のサポートが欠かせません。
しかし、うつ病に対して家族からの理解を得られなかったり、身近に心を許せる人がいなかったりという可能性もあるでしょう。
その場合は、入院して病院からのサポートを受けることをおすすめします。
入院することのメリット
自宅療養と言っても、家事や育児など避けられない仕事があったり、家族からの理解を得られなかったりと、きちんと休めない場合があります。
療養環境が悪いところに身を置いていても、症状が回復せず長期化してしまうだけです。
このように、必要な休息が見込めないときは、入院して治療に専念することも大切なのです。
ただし、うつ病で入院できるかどうかは病院によって対応が異なります。
入院用の病棟がないなど施設が不十分であれば、別の病院を紹介してもらうことも含めて相談してみると良いでしょう。
入院期間と入院費用は平均どれくらいかかる?
うつ病で入院する場合の入院期間はどのくらいなるのでしょうか。また、入院費用がいくらかかるのかも気になります。
平均入院期間や入院費用の目安について確認していきましょう。
うつ病の入院期間は平均113.9日
うつ病により入院した場合の平均入院期間は、厚生労働省の「平成29年患者調査の概況」によると、113.9日となっています。
これは、全年齢の平均入院期間なので、年代別に詳しくご紹介すると以下のようになります。
年齢 | 平均入院日数 |
0~14歳 | 75.7日 |
15~34歳 | 47.1日 |
35~64歳 | 74.9日 |
65歳以上 | 167.0日 |
75歳以上 | 196.0日 |
参考:厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」
※この調査結果は、うつ病だけではなく「気分(感情)障害(躁うつ病を含む)」という結果を参考にしていることをご了承ください。
年代別の平均入院日数を比較すると、0~14歳の入院が長引く傾向にありますが、それ以降は一度減少するものの高齢になるにつれ再び長くなっていくことがわかります。
ほかの傷病よりも長期間になる傾向がある
うつ病の平均入院期間は、113.9日と長期間に及ぶことが多いため「思ったよりも長引く」という印象がありますが、ほかの傷病と比較すると長いのか短いのか気になりますね。
主な傷病の平均入院日数をいくつか挙げてみますので比較してみましょう。
傷病名 | 平均入院日数 |
うつ病 | 113.9日 |
胃がん | 19.2日 |
乳がん | 11.5日 |
高血圧性疾患 | 33.7日 |
糖尿病 | 33.3日 |
肺炎 | 27.3日 |
平均入院日数が1か月前後の傷病が多い中で、うつ病は約3倍の入院日数がかかることになり、ほかの傷病と比較して入院日数が長い傾向があることがわかります。
うつ病の平均入院費用は約40万円
では次に、うつ病で入院した場合の平均入院費用を見ていきましょう。
厚生労働省の「医療給付実態調査」によると、うつ病の平均入院費用は392,761円です。ただしこれは公的医療保険適用前の金額なので、たとえば自己負担割合が3割の方の場合は平均117,828円となります。
また、この費用のほかにも食事代や療養費用がかかりますので、さらに費用が追加されます。
では、ほかの傷病の入院費用を比較してみましょう。
傷病名 | 平均入院費用 | 自己負担(3割の場合) |
うつ病 | 392,761円 | 117,828円 |
がん | 683,201円 | 204,960円 |
高血圧性疾患 | 391,932円 | 117,580円 |
糖尿病 | 447,212円 | 134,164円 |
肺炎 | 444,981円 | 133,494円 |
参考:厚生労働省「医療給付実態調査」
うつ病で入院した場合にかかる費用は、ほかの傷病で入院した場合よりも安く抑えられる傾向にあります。
とはいえ、入院期間が長引くことが多いので経済的負担が大きくなることが考えられます。
うつ病で保険はおりる?新規加入はできる?
うつ病で保険金を受け取れる保険とは?
多くの医療保険は、入院した場合に、入院日数に応じた給付金が受け取れます。
うつ病が原因の入院であっても、この条件を満たしている限り、他の病気によるものと同様に入院給付金を受け取るができます。
もちろん、下記の場合は別です(限度日数内ぶんは受け取れます)。
- 限度日数を超える場合の、超えた日数ぶん
- 商品ごとの免責事項(保険金が支払われない条件)にあてはまる場合
また、入院ではなく自宅療養のような状態でも、まったく仕事ができないようであれば、就業不能保険や所得補償保険の対象になる場合があります。
以前は、精神疾患による就業不能は対象外である商品が多かったのですが、最近は対象とするものも増えてきました。
保険会社・商品によって異なりますので確認したほうがいいでしょう。
うつ病でも新規加入は可能か?
過去に治療歴があり、完治してから年数が経っている場合などであれば、加入できることもあります。
しかし、うつ病などの精神疾患は完治の判断も難しく、ハードルは高いと言わざるを得ません。
後々、保険給付を受けるときに、治療歴を隠していたことが判明した場合、告知義務違反とみなされて、保険金を受け取れないばかりか、契約が解除され、それまで支払った保険料も返金されません。
同様に、加入にほとんどの条件をつけない無選択型という保険もあります。
そもそも保険に加入できるかどうかは、ある程度は機械的に条件で判断されますが、最終的には保険会社がその契約を認めるかどうかです。
その人それぞれの状況があり、一方で保険会社によって考え方が違う部分もあるため、うつ病だから入れないと思い込んでしまう前に、一度、相談をしてみる価値はあります。
うつ病そのものは保障されなくても、その他の病気に備えて保険に入りたい、などという場合は、特定疾病不担保といって、特定の病気(この場合はうつ病)だけを保障しないという契約をすることも可能です。
また、がん保険は、もとより、がんだけが保障の対象ですので、うつ病の治療歴には関係なく加入できます。
治療をサポートする自立支援医療制度
自立支援医療制度を利用すると、通常3割となっている医療費の負担額が1割に軽減されます。
また、月々の費用の自己負担額の上限が設けられ、一定額以上の費用負担をしなくて済むようになっているのです。
自己負担額の上限はもともと高額療養費制度にて定められていますが、自立支援医療制度を適用できる場合はさらに上限が低くなる可能性もあります。
自立支援医療制度を適用した場合の自己負担額
自立支援医療制度における費用の自己負担額上限は、世帯所得によって以下のように定められています。
所得区分 | 世帯所得 | 自己負担額の上限(月) | 「重度かつ継続」の場合 |
---|---|---|---|
生活保護 | 生活保護を受給している | 0円 | 0円 |
低所得1 | 住民税が非課税で、 かつ本人の所得が80万円以下 |
2,500円 | 2,500円 |
低所得2 | 住民税が非課税で、 かつ本人の所得が80万円超 |
5,000円 | 5,000円 |
中間所得1 | 住民税の納税額が 3万3,000円未満 |
高額療養費制度の 費用負担上限と同様 |
5,000円 |
中間所得2 | 住民税の納税額が 3万3,000円~23万5,000円未満 |
高額療養費制度の 費用負担上限と同様 |
10,000円 |
一定所得以上 | 住民税の納税額が 23万5,000円以上 |
対象外 | 20,000円 |
高額療養費制度による支給を年間で4回以上受けている場合や、3年以上の経験を持つ医師から集中的な精神医療が必要と判断された場合に該当します。
自立支援医療を適用する際の注意点
自立支援医療制度を利用する場合、以下の5つのポイントに注意する必要があります。
- 主治医による認定が必要
- 対象となるのは通院のみ
- 指定の医療機関でないと利用できない
- 一定額以上の所得がある場合は対象外
- 有効期限がある
これらについて、順を追ってみていきましょう。
主治医による認定が必要
自立支援医療制度の申請には主治医の診断書が必要です。
「重度かつ継続」と判断された場合は診断書の様式が通常とは異なることもあり、早めに相談しておくことをおすすめします。
対象となるのは通院のみ
自立支援医療制度は通院による治療や診察料金、処方箋代のみが対象となっています。
入院費用の補助は受けられないので注意しましょう。
その他、デイケアや訪問看護などが自立支援医療制度の対象に含まれています。
指定の医療機関でないと利用できない
自立支援医療制度は指定の医療機関・薬局のみで利用可能なものです。
全ての病院で適用できるわけではないので、事前に病院側へ確認するようにしましょう。
一定額以上の所得がある場合は対象外
上記の表にもまとめたように、給料など一定額以上の収入を得ている方は自立支援医療制度の対象外となります。
ただし、「重度かつ継続」と判断された場合は収入に関係なく利用できます。
有効期限がある
自立支援医療制度は、1年ごとに更新手続きが必要です。
有効期限が終了する3か月ほど前から更新手続きができるようになるので、早めに窓口へ出向くようにしましょう。
治療内容などが大きく変わらない場合、診断書の提出に関しては2年に1回で良いとされています。
仕事が原因のうつ病は労災補償がおりることも
職場の労働条件や人間関係が影響して、うつ病を患ってしまう方も多いです。
労災認定を受けた場合、療養補償給付を受け取ることができ、費用の自己負担なく治療することができます。
また、休職が必要になるなど働くことが難しい場合には、休業補償給付という形で給与平均の約8割を受け取ることが可能です。
パワハラや長時間労働などが原因でうつ病を患った場合は、指定の労働基準監督署へ相談してみましょう。
企業側も、スタッフの心身の健康を守るための対策が必要な時代となっています。
入院費用だけではない!社会復帰を助ける制度
うつ病など精神疾患は完治するまでに長い時間がかかります。
休職による収入減や、療養後の社会復帰など、うつ病患者が抱える問題は様々です。
精神障害者保健福祉手帳とは
この手帳を提示することで、公的支援や各種サービス、控除などの優遇措置が受けられます。
精神障害者保健福祉手帳の交付対象となっている精神疾患には以下のようなものがあります。
- 躁うつ病
- 総合失調症
- 非定型精神病
- てんかん
- 中毒精神病
- 器質性精神障害
- 高次脳機能障害
など
また、精神障害者保健福祉手帳には1級~3級の等級があり、それぞれの判定基準は以下の通りです。
- 1級
- 常にサポートを受けながらでないと生活を送ることが難しい状態。
- 2級
- 通常は1人でも生活ができるものの、ストレスの強い環境下では対処しきれない状態。
- 3級
- 1人で生活ができ、就労もできる状態。(ただし過大なストレスを感じたときに1人では解決が難しい場合)
等級の判定は、各都道府県の精神保健センターでの審査によります。
精神障害者保健福祉手帳で受けられる措置
精神障害者保健福祉手帳を持つことで、様々な支援やサービスを受けることが可能です。
税制上の優遇措置と生活保護上の優遇措置などについて詳しく見ていきましょう。
税制上の優遇措置
精神障害者保健福祉手帳の等級によって、以下の税金で控除が受けられます。
- 所得税
- 住民税
- 相続税
生活保護上の優遇措置
うつ病で精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた方がすでに生活保護の給付も受けている場合、給付額が加算される可能性があります。
初診日から1年6か月が経過しており、等級が1級または2級であることが条件です。
その他
その他、精神障害者保健福祉手帳による優遇措置には以下のようなものがあります。
- 障害者雇用枠での就労
- 公共交通機関の運賃減額・無料化
- 携帯電話の割引 など
まとめ
- うつ病などの精神疾患でも、症状によっては入院が必要
- 入院期間が長期化しやすく、費用も高額になる可能性がある
- うつ病患者に対する様々な支援制度の活用がおすすめ
うつ病で入院した場合、入院費用以外にも様々な費用がかかる他、長期化による収入減なども懸念されます。
医療制度や支援制度を知り、安心して自分と向き合えるように準備することが大切です。
保険商品のご検討にあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり」「約款」などを必ずご覧ください。
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