生命保険料について確定申告で控除を受ける方法とは
確定申告の際に生命保険料控除の手続きを行うと、その年に支払う税金を節約することができます。
ここでは、生命保険料控除の仕組みや対象となる保険料の種類、確定申告の方法と書き方をはじめ、提出を忘れてしまった方の対応方法などもご紹介します。
自営業の方はもちろん、会社員の方もいざという時に困らないよう、確定申告の方法を確認しておきましょう。
この記事は5分程度で読めます。
目次
確定申告における生命保険料控除とは
対象となるのは生命保険と個人年金保険、そして介護医療保険の3種類です。
- 生命保険
- 個人年金保険
- 介護医療保険
生命保険料控除を利用すると、所得税と住民税の支払額を抑えることができ、節税につながります。
通常、会社員の方は年末調整のタイミングで生命保険料控除の証明書を提出します。
ただし、証明書の提出を忘れていたり、紛失後の再発行が間に合わなかったりすると、自分で確定申告をしなくてはいけなくなります。
面倒だからといって生命保険料控除を行わずにいると、本来は払わなくても良かった税金を納めることになり、結果として損をしてしまうのです。
また、生命保険料控除だけでなく医療費控除などを受ける場合は、年末調整をしていても確定申告が必要です。
「控除」の種類と仕組み
きちんとした収入を得ている方もいれば、ケガや病気の影響で収入を得られない期間があった方もいるでしょう。
国民の負担を平等にするためには、ケガの治療にかかった医療費や、同一生計の扶養家族にかかる費用などを考慮する必要があると言えます。
控除は「人的控除」と「物的控除」の大きく2種類に分類され、それぞれ以下のような種類があります。
人的控除 | 物的控除 |
---|---|
・基礎控除 ・配偶者控除 ・配偶者特別控除 ・扶養控除 ・障害者控除 ・寡婦(寡夫)控除 ・勤労学生控除 | ・社会保険料控除 ・生命保険料控除 ・地震保険料控除 ・小規模企業共済等掛金控除 ・医療費控除 ・寄附金控除 ・雑損控除 |
人的控除は納税者本人をはじめ、子どもなど扶養家族の状況に応じて控除されるものです。
物的控除はその年に払った医療費や保険料などに対して控除されるものです。
これらの控除額が大きいほど課税対象となる所得が低くなり、最終的に支払う税金が安くなります。
節税のためにも、控除できるものは全て確定申告できるように準備しましょう。
生命保険料控除の対象
冒頭でもお伝えしましたが、生命保険料控除の対象となる保険料は以下の3種類です。
- 生命保険
- 個人年金保険
- 介護医療保険
これらは国民年金や健康保険のように誰もが支払いを行うというものではなく、納税者本人の意思のもとで加入契約した保険になります。
それぞれの保険の特徴を見ていきましょう。
生命保険
民間の企業が提供しており、企業や契約プランによってその内容・料金は様々です。
その年に支払った保険料に対して控除額が計算され、確定申告後に払い過ぎた分の還付が受けられます。
また、生命保険については平成24年に法改正が行われており、契約の時期によって控除の対象や上限額が異なります。
新旧の生命保険料控除の計算方法は後ほど詳しく解説しますので、合わせてチェックしてみてください。
その他、保険期間が5年未満のものや国外で締結した保険など、一部の商品は対象外となることがあります。
個人年金保険
近年、公的年金制度だけでは老後の生活が賄えないと不安を感じている方も多く、個人的に別途年金保険へ加入する方が増えています。
こちらも民間の企業が提供しており、商品によって期間や受け取り方法などは様々です。
個人年金保険の控除を受けるには、以下の条件に当てはまっている必要があります。
- 年金の受取人が契約者本人またはその配偶者であること
- 年金の受取人が被保険者と同一であること
- 保険料の払込期間が10年以上であること
- 年金の支払開始が60歳以上で、かつ支払期間が10年以上あること
介護医療保険
入院や通院の際に給付される主契約保険料や特約保険料が対象になると理解しておきましょう。
介護医療保険は、平成24年の法改正の際に保険料控除の対象として追加されました。
改正前は生命保険料控除として一括りにされていたものが、生命保険料控除と介護医療保険控除に区別されたことで、控除額の上限が大きくなったのです。
該当する保険を利用している方は、こちらの控除も活用して、更なる節税を実現しましょう。
生命保険料控除の計算方法
生命保険料控除の計算方法は新契約と旧契約によって異なります。
新旧それぞれの計算方法を詳しく見ていきましょう。
新契約の場合
新契約の場合は、生命保険料・個人年金保険料・介護医療保険料の合計額に対して計算を行います。
保険料に応じた所得税と住民税の控除額の計算方法は以下の通りです。
所得税
年間の払込保険料 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 払込保険料等の全額 |
20,000円超 40,000円以下 | 払込保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 | 払込保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
住民税
年間の払込保険料 | 控除額 |
---|---|
12,000円以下 | 払込保険料等の全額 |
12,000円超 32,000円以下 | 払込保険料等×1/2+6,000円 |
32,000円超 56,000円以下 | 払込保険料等×1/4+14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
旧契約の場合
旧契約の場合は、生命保険料・個人年金保険料の合計額に対して計算を行います。
保険料に応じた所得税と住民税の控除額の計算方法は以下の通りです。
所得税
年間の払込保険料 | 控除額 |
---|---|
25,000円以下 | 払込保険料等の全額 |
25,000円超 50,000円以下 | 払込保険料等×1/2+12,500円 |
50,000円超 100,000円以下 | 払込保険料等×1/4+25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
住民税
年間の払込保険料 | 控除額 |
---|---|
15,000円以下 | 払込保険料等の全額 |
15,000円超 40,000円以下 | 払込保険料等×1/2+7,500円 |
40,000円超 70,000円以下 | 払込保険料等×1/4+17,500円 |
70,000円超 | 一律35,000円 |
新旧両方の契約がある場合
新契約と旧契約どちらかであれば上記の計算方法で良いですが、両方の保険に加入している方はどのように計算すれば良いのか迷いますよね。
まずは旧契約の保険で計算を行い、控除額がいくらになるのかを確認しましょう。
控除額が40,000円以上になるようであれば、旧契約のみで確定申告を行う方がお得です。
40,000未満の場合は新旧の保険を併用し、新契約の計算方法を適用すると良いでしょう。
生命保険料控除の新旧契約
先ほども少しご紹介したように、生命保険料控除は平成24年の法改正によって対象範囲や上限が変更されました。
法改正後に契約した保険を「新契約」、法改正以前に契約した保険を「旧契約」と呼びます。
毎年10月~11月頃に保険会社から届く証明書を見れば、新旧どちらの契約であるかが記載されているため、特に覚えていなくても問題ありません。
法改正によって大きく変わったのは、介護医療保険が控除の対象として新設された点です。
これに伴い、各控除の上限額も変更されています。
各控除の上限額は以下の通りです。
控除対象 | 新契約 | 旧契約 | ||
---|---|---|---|---|
所得税 | 住民税 | 所得税 | 住民税 | |
生命保険 | 40,000円 | 28,000円 | 50,000円 | 35,000円 |
個人年金保険 | 40,000円 | 28,000円 | 50,000円 | 35,000円 |
介護医療保険 | 40,000円 | 28,000円 | – | – |
旧契約では合計上限10万円(住民税は70,000円)であるのに対し、新契約では12万円(住民税は84,000円)です。
保険料負担者が契約者以外の場合、控除はどうなる?
実際に保険料を負担している人と、契約者が異なる場合があります。
この場合、保険料控除は受けられるのでしょうか。
よくあるケースごとに見ていきましょう。
ケース1 妻の保険を夫が支払っている
専業主婦で、収入がない妻の保険料を、夫が払っているケースなどが代表的でしょう。
妻が契約者かつ被保険者で、保険料負担者は夫という形ですが、税制上、契約者とは保険料負担者と読み替えてよいことになっています。
控除は実際に支払った人に対する特典ですから、この例で言うと、
- 夫(=保険料負担者)が生命保険料控除を受けられます
- 夫が控除の手続きを行います
ケース2 親が契約した子の保険料を子が支払っている
子が若い頃に親が契約してくれた保険を、当初は親が保険料を払っていましたが、今は子が自分で支払っているというケースです。
この場合も、契約者(親)と保険料負担者(子)が異なりますが、
- 税制上は子が控除を受けることができます。
- また、親が支払っている間は、親が控除を受けることができていました。
ケース3 会社が契約した保険の保険料が給与天引きされている
会社を通して保険に加入した(「団体扱い」などといいます)ケースです。
保険料が天引きされているので社員は自分で支払っている実感がないかもしれませんが、保険料負担者は社員ということになります。
この場合、保険料が給与として支払われている場合は、社員自身が支払ったものとみなされますので、
- 社員が控除を受けることができます。
ただし、このようなケースでは、控除証明書は会社に対して送付され、会社が年末調整で処理することがほとんどです。
契約者と保険料負担者が違う場合の注意点
保険料控除を受けるには、保険契約が控除対象になる条件を満たす必要があります。
「保険金のすべてを契約者(税制上は保険料負担者)本人またはその配偶者・その他親族が受け取る」ことなどが要件です。
控除対象の保険契約であるならば、契約者と保険料負担者が異なる場合も、実際に保険料を負担する人が控除を受けることができます。
ただ、保険契約の契約者(保険料負担者)・被保険者・保険金受取人の関係は、受け取った保険金の課税関係に影響します。
ケース1やケース2の場合、控除の面では問題がなくても、保険金を受け取る際の税金の面で問題がないかどうかは確認したほうがいいでしょう。
必要に応じて、名義変更などを行ったほうが良い場合があります。
【提出忘れ】確定申告書の書き方
生命保険料控除の確定申告を行うには、いくつかの書類を揃える必要があります。
確定申告前に準備するものと、申告書の書き方を順に見ていきましょう。
確定申告に必要な書類
生命保険料控除の確定申告を行うために必要なものは以下の通りです。
- 確定申告書
- 生命保険料控除証明書
- 源泉徴収票
- 印鑑・通帳
確定申告書
確定申告書は、国税庁のWEBサイトから印刷できるようになっています。
また、窓口で直接用紙を受け取ったり、会計ソフトを利用している方は入力後に印刷したりするという方法もあります。
生命保険料控除証明書
生命保険料控除証明書は、毎年10月~11月頃に保険会社から郵送で届きます。
提出の際にはコピーではなく原本が必要となるため、紛失した場合は速やかに再発行を依頼しましょう。
源泉徴収票
源泉徴収票は、年末調整後に勤め先の会社から受け取ることができます。
会社員の方で、年末調整後更に確定申告を行うという場合に必要な書類です。
印鑑・通帳
還付金の振り込みを行う口座の記入が必要な部分があります。
口座番号が分かる通帳(またはカード)と、認印用の印鑑(シャチハタは不可)を用意しておきましょう。
確定申告書への記入方法
確定申告書の記入は以下の流れで行います。
- 前述した計算方法で控除額を計算する
- 確定申告書の「生命保険料控除」欄へ支払った保険料を転記する
- 確定申告書の「所得から差し引かれる金額」欄へ控除額を転記する
この確定申告書には、「A様式」と「B様式」があります。
それぞれの対象者と記入方法は以下の通りです。
A様式の確定申告書の場合
A様式の確定申告書は、給与所得や公的年金、雑所得のみの方が利用するものです。
会社員やアルバイト・パートの方はA様式の確定申告書を使うことが多いです。
A様式の確定申告書を利用する方は以下の項目に必要な金額を記入してください。
- 第一表
- 「(8)生命保険料控除欄」に、計算した控除金額合計を記入
- 第二表
- 「(8)生命保険料控除欄」に、新旧生命保険料・新旧個人年金保険料・介護医療保険料を記入
B様式の確定申告書の場合
B様式の確定申告書は、所得の制限がなく、誰でも利用できる内容となっています。
年間15万円を超える副収入がある方や個人事業主の方はB様式を使うようにしましょう。
B様式の確定申告書を利用する方は以下の項目に必要な金額を記入してください。
- 第一表
- 「(14)生命保険料控除欄」に、計算した控除金額合計を記入
- 第二表
- 「(14)生命保険料控除欄」に、新旧生命保険料・新旧個人年金保険料・介護医療保険料を記入
まとめ
- 生命保険料控除とは、支払った保険料に対して一定額の控除が受けられる制度
- 保険商品の保障内容や契約時期によって控除額が異なる
- 年末調整で申告を逃した場合でも、確定申告の手続きを行えば還付金が支払われる
確定申告書の書き方が分からないという場合は、管轄の税務署などで相談にのってもらうことができます。
支払った保険料を申告すれば余計な税金を払わなくて済むため、面倒と思わずしっかり確定申告を行うことをおすすめします。
保険商品のご検討にあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり」「約款」などを必ずご覧ください。
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