奨学金破産は子どもだけじゃない!奨学金で破産しないために親子でやるべきこと

奨学金は大学や短大、専門学校などの教育機関で学ぶ人を対象に、国が貸与するお金のこと。経済的な事情により、進学が難しい学生を救済するために作られた制度です。
しかし実は、奨学金を返済する能力がなく“自己破産”という悲しい選択をせざるを得ないケースも多発しています。
また自己破産すると、奨学金を借りた本人だけではなく、その親にまで返済義務が生じる可能性もあります。このような事態を回避するために、親子でやるべきことなどをまとめました。
目次
奨学金が返済できずに自己破産する人の割合
日本憲法による「教育の機会均等の理念」のもと、学ぶ意欲や能力を持つ学生が経済的な理由によって進学を諦めることがないよう、奨学金貸与事業が実施されています。
奨学金貸与事業の運営は「独立行政法人日本学生支援機構(以下、JASSOと称する)」が行っており、JASSOのデータによると2019年現在、2.6人に1人の学生が奨学金制度を利用している状況です。
そして在学中に貸与を受けた奨学金は、卒業後に毎月返す仕組みになっています。
JASSOの奨学金にはいくつか種類がありますが、無利息で借りることができる「第一種奨学金」と利息が発生する「第二種奨学金」に大別することができます。
そのため、「第一種」の場合は借りた奨学金全額、そして「第二種」の場合には借りた元金+利息分を返済しなければならないのです。
大学などの教育機関を卒業後、すぐに返済が始まる奨学金という名のローンに苦しむ人が増えていると言われています。そして実際に、奨学金の返済をしている人が自己破産するというケースも多発しているのです。
では、JASSOによる奨学金返還者の自己破産に関するデータをご紹介しましょう。
2012年~2016年度において、返還者本人の自己破産により奨学金の債務が免責になった、または保証債務が免責となったなどのケースは、8,108件。
このうち、2016年度に返還者本人が新たに自己破産となったケースが2,009件発生したと公表されています。
この年の返還者総数は約410万人なので、奨学金が返済できずに自己破産する人の割合は、奨学金の貸与を受けた人全体の0.05%と算出されます。
全体の0.05%=2000人に1人が自己破産をしているという計算になります。意外と多いと感じた人もいるのではないでしょうか。
もちろん返還者本人による自己破産の直接的な原因は不明です。しかしながら、奨学金返済がその一因となった可能性は十分に考えられます。
自己破産のメリットとは?
奨学金の返済のみならず、その他の債務などが返済不能になった際の手段ともして知られる自己破産とは、一体どのような手続きなのかご存知ですか?
自己破産とは裁判所に申し立てを行い、自分が持っている財産を清算し、借金を免除してもらう手続きのことを言います。
奨学金による返済額が膨らみ、首が回らなくなってしまった場合の手段である自己破産には、以下のようなメリットがあります。
- すべての支払い義務が免除される
- 誰でも手続きができる
- ある程度の財産は残すことができる(没収すべき資産とみなされない範囲)など
なぜ奨学金で破産してしまうのか?
奨学金は、卒業後に毎月返済していくという仕組みですが、実際にはどのくらいの金額を返済する必要があるのでしょうか。
JASSOの公式ホームページによると、4年制大学(貸与月数48ヶ月)で第一種奨学金(無利息)の貸与を受けた場合の返済例は以下のとおりです。
貸与月額は、2012年度新規入学者に標準修業年限貸与した場合としています。
通学形態 | 貸与月額 | 貸与総額 | 返還月額 | 返還回数 (年数) |
|
---|---|---|---|---|---|
国・公立 | 自宅 | 45,000円 | 3,240,000円 | 14,210円 | 228回 (19年) |
自宅外 | 51,000円 | 3,672,000円 | 15,300円 | 240回 (20年) |
|
私立 | 自宅 | 54,000円 | 3,888,000円 | 16,200円 | 240回 (20年) |
自宅外 | 64,000円 | 4,608,000円 | 19,200円 | 240回 (20年) |
4年制私立大学に自宅外から通学し、月々64,000円の奨学金貸与を受けた場合…国に対して約460万円借金をした状態で大学を卒業し、月々19,200円の返済を20年続けなければなりません。
しかし、この返済額は無利息タイプの奨学金の場合のシミュレーションです。利息が発生する第二種奨学金の貸与を受けた場合には、卒業後の返済月額はより多額になり、返済者に重くのしかかります。
実際に近年、奨学金を借りても予定通りに返済することができないという人が増加の一途をたどっているそうです。
JASSOでは奨学金の返済を3ヶ月以上延滞している人を「延滞者」と定義していますが、2017年度のデータによると延滞者は35万人以上にのぼります。
延滞者が増加するその原因には、大学の授業料アップや非正規社員の増加などが考えられます。
なぜ大学は授業料をアップするのでしょうか。なぜなら少子化に伴い、大学を受験する人数も減っています。
そのため多くの大学が運営を維持するために、授業料をアップせざるを得ない状況に陥っているのです。また中には、親の収入が少ないため、奨学金を借りなければ生活することすら難しいというケースもあります。
一方、奨学金の貸与を受けていた人の中には、卒業後に非正規社員として就職する人の割合も高く、奨学金を返済する余裕がないというケースもあるようです。
さらに延滞者の中には、在学中の生活費が奨学金だけではままならず、アルバイトを重ねた結果、必要な単位を取得できずに、中退せざるを得ないという人もいるようです。
中退すると、正規社員として就職することはさらに厳しくなるでしょう。
実際にJASSOの2015年度のデータによると、延滞者が奨学金を返済できない理由を調査したアンケート結果(複数回答可)は以下のように公表されています。
- 本人の低所得…67.2%
- 延滞額の増加…53.8%
- 親の経済困難…50.6%
- 本人の借入金の返済…34.8%
- 本人が失業中(無職)…17.7%
- 家族の病気療養…13.0%
- 配偶者の経済困難…9.1%
- 本人が病気療養中…7.1%
さまざまな事情により、奨学金を返済することが困難になっていることがわかります。
また回答率の高い延滞理由である「本人の低所得」や「延滞額の増加」、「親の経済困難」などは、すぐに改善できるとは考えにくく、時間の経過とともに延滞額は膨らみ、結果的に“自己破産”に追い込まれてしまうのではないでしょうか。
奨学金の保証制度によっては親子で自己破産するケースも
JASSOの奨学金の貸与を受けるにあたっては、一定の条件を満たした連帯保証人および保証人を選任する必要があります。
いわゆる人的保証制度です。人的保証は奨学金制度を円滑に運営するためには、必要な制度と言えるでしょう。
連帯保証人または保証人とは、奨学金の貸与を受ける本人が返済を延滞した場合に、本人に代わって返済する義務がある人を指します。連帯保証人・保証人は原則として、以下の間柄から選任するのが原則です。
- 連帯保証人:父母またはこれに代わる人
- 保証人:4親等以内の親族で本人および連帯保証人と別生計の人
人的制度の仕組み
万が一、JASSOによる奨学金の貸与を受けた本人による返済が滞ると、本人だけでなく連帯保証人や保証人へも督促や請求が発生する可能性があります。では、人的制度の仕組みを簡単にご紹介しましょう。
返済者(奨学生)本人の返済が延滞→連帯保証人(父・母など)に請求
返済者本人・連帯保証人ともに返済が困難→保証人(おじ・おばなど)に請求
長期に渡って延滞が解消されない→支払督促の申立てを裁判所に対して行うなど、法的手続きへ
延滞した場合、個人信用情報機関に延滞情報が登録されます。
その影響により、クレジットカード(買い物・キャッシング・スマートフォンの利用料の引き落しなど)、自動車や住宅のローンの利用に制約が生じる可能性も。
もちろん、個人信用情報機関に一度登録されたとしても、奨学金返済の延滞分を支払えば、延滞が解消されたという情報は新たに登録されます。
このように奨学金の貸与を受けていた本人による返済が滞ることにより、その親、さらにはおじ・おばなどの親族の生活にまで影響を及ぼす場合もあるのです。
【数値で見る】親子で自己破産するケースとは
前述の2012年~2016年度における、自己破産により奨学金の債務が免責になった、あるいは保証債務が免責となったなどの件数データでは、返済者本人だけでなく、連帯保証人と保証人における件数も公表されています。
- 連帯保証人:5,499件
- 保証人:1,731件
連帯保証人の破産5,499件のうち、返済者本人が破産していた件数は764件。また、保証人の破産1,731件のうち、返還者本人および連帯保証人が破産していた件数は96件でした。
これらのデータから算出すると、自己破産した連帯保証人のうち、親子で自己破産したケースが13.9%発生しているということになります。
このように奨学金の貸与を受けた本人が返済能力を失い自己破産すると、奨学金の返済を肩代わりした親やおじ、おばまで自己破産せざるを得ない“破産の連鎖”という恐ろしい事態も起こり得るのです。
奨学金が返済できないときの自己破産以外の方法
前述のとおり、借金を一旦全額リセットできることは自己破産のメリットです。しかし当然のことながら、デメリットもあります。
<自己破産によるデメリット>
- クレジットカードが利用できなくなる
- 就職できる職業に制限がかかる
- 資産としてみなされる財産が没収される
- 連帯保証人の支払い義務は残る
上記のようなデメリットを考えると、自己破産という道は安易に選ぶべきではないでしょう。そのため自己破産の前段階として有効な手段である「減額返還」または「返済猶予制度」を検討するのがおすすめです。
減額返還とは?
一定の期間、“月々の返済額を2分の1または3分の1に減額”し、減額返還適用期間に応じで、返還機関を延長することができます。返す期間は伸びますが、月々の返済額が減るため返しやすくなるというものです。
ただし「減額返還」は、返済の総額は減らないこと。また返済を延滞している場合には適応にならないことを把握しておく必要があるでしょう。
返済猶予制度とは?
一定の期間、“返還を猶予し、先送りにする”、つまり返済を待ってもらえる制度です。
災害や傷病、産前休業・産後休業などの特別な事情が無い限り、「返済猶予制度」の適用期間は、通算10年(120ヶ月)までとされています。
こちらも返済すべき総額や利息分は免除されないことには注意が必要です。
奨学金は借金!なるべく使わずに済むように早めにお金の用意を
奨学金は、経済的な理由で進学が難しい状況にある人にとっては大変有効な支援制度です。奨学金の貸与を受けたおかげで、大学を卒業し、正規社員として社会で活躍している人もたくさんいるでしょう。
しかしながら、卒業後に多額の奨学金返済に苦しめられ、生活が困窮している人がいるのも事実。そのような厳しい状況を回避するために、親子でやるべき3つのポイントをご紹介します。
大学入学前から準備開始!返済シミュレーションも
入学後に奨学金の貸与を受ける予定がある場合には、事前に準備を始めるのがおすすめです。
JASSOには負担のない「給付型」の奨学金もありますが、高校3年生の春にしか申し込めないという条件があります。
またJASSOの他にも、給付型の奨学金制度がある大学や地方自治体などもあるので、情報収集をして、未来の負担がなるべく少なくなるよう策を練りましょう。
また入学後に月々どのくらいの生活費が必要となるのか、仕送りはどのくらいあるのかなどを具体的にシミュレーションしておくことも大切です。
必要以上の奨学金の貸与を受けた結果、卒業後の返済が想像以上に大変だったという話もよく耳にします。そのため親子で一緒に借り入れ計画を立てましょう。
余裕があるときに繰り越し返済する
奨学金は、まとまった額を繰り越し返済することもできます。ボーナスや臨時収入により余裕がある場合には、なるべく奨学金返済に回し、将来の負担を軽減しましょう。
奨学金返済中の子がいる親も同様に、まとまったお金が入ったときには積極的に奨学金返済に回してあげると良いでしょう。
親子で情報を共有し、奨学金返済の延滞を未然に防ぐ
奨学金の返済は、3ヶ月返済が滞ると「延滞者」として扱われます。日々忙しい生活の中では、3ヶ月はあっという間に過ぎてしまうもの。
延滞しても、延滞分を支払いさえすれば社会的に不利益を被ることはありませんが、月々の返済額を減らすことができる「減額返還」などの救済措置の対象外となってしまうので、注意が必要です。
そのためJASSOからの通知は全て正確に目を通し、支払いが滞らないようにすることが大切。また無理な返済を続けて、生活が困窮するという状況に陥らないためにも、親子で情報を共有して、早めに救済措置を活用すると良いでしょう。
まとめ:奨学金は借金!借りる前にしっかり検討しよう
貸与型の奨学金の多くは、大学などに入学してから申請します。そのため学生本人だけで安易に月々の貸与額を決めてしまい、卒業後に奨学金返済額の総額を聞いた親が頭を悩ませるというケースもあるようです。
奨学金の貸与を受ける予定がある家庭は、奨学金は借金という認識を親子で共有し、入学前に計画を立てておくことが重要と言えるでしょう。
奨学金の貸与額や仕送りの額がいくら必要になるのが分からない場合には、ファイナンシャルプランナーなどお金のプロに相談してみてはいかがでしょうか。
保険商品のご検討にあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり」「約款」などを必ずご覧ください。
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