国民皆保険制度の種類とそれぞれの違い

日本には、「国民皆保険」という優れた制度があります。
この制度により、日本のすべての国民は5種類ある「公的医療保険」のいずれかに加入することになっており、いつでも・どこでも・誰でも安心して医療機関での治療を受けることができるのです。
そこで今回は、私たちの健やかな生活の基盤となる「国民皆保険制度」についてまとめました。また加入すべき「公的医療保険」の種類とそれぞれの特徴もご紹介します。
目次
そもそも国民皆保険制度とは?
「国民皆保険制度(こくみんかいほけんせいど)」をご存知ですか?
「国民皆保険という言葉は聞いたことはあるけど、詳しくは知らない」「知っているけど、自分がどの種類の保険に入っているのかわからない」という方も中にはいるかもしれませんね。
「国民皆保険」は日本人である私たちが安心して暮らすためのベースとなる重要な制度なので、まずは「国民皆保険制度」について詳しくご紹介します。
「国民皆保険制度」の成り立ちを知ろう
普段、私たちが医療機関で治療を受けたとき、窓口で保険証を提示すれば、医療費の一部のみを負担するだけで済むということが当たり前になっていますよね。
この医療費軽減のシステムこそ、「国民皆保険」により成り立っているのです。しかし、世界に目を向けてみると、日本の「国民皆保険」のように医療保険体制が整っている国ばかりではありません。
先進国であっても、公的な保険の種類が少なく、民間保険が中心の国や無保険者を多く抱えている国も多数あります。
しかしながら、日本もはじめから現在のような「国民皆保険」の状態であった訳ではありません。
大正時代以前は、病気はあくまでも自己責任と考えられており、多くの一般庶民は医療費の支払いに苦しみ、適切な医療を受けられないというケースも多発していたようです。
昭和に入ると、「公的医療保険制度」が制定されましたが、当時の国力向上・産業育成第一という考えのもと、大企業に勤める人や官僚などの限られた種類の職業に従事する者のみが保険の加入対象となっていました。
そのため1955年(昭和30年)ごろまでは、国民の3分の1ほどに相当する約3000万人が無保険状態。
そして無保険者の多くは、農業を営む人や自営業の人、またはわずかな資本で経営するごく小規模な企業の従業員という状況であり、大きな社会問題になっていました。
そして、この社会問題を解決に導くきっかけとなったのが、1958年(昭和33年)に制定された「国民健康保険法」です。
「国民健康保険法」は、従来の「公的医療保険制度」の対象から除外されていた人々を救済することを主な目的としてつくられました。
この法律の制定を機に1961年(昭和36年)には、全国の市町村で国民健康保険事業が開始され、従事する職業の種類に関わらず、誰でも平等に保険医療を受けることができる「国民皆保険制度」が定められたのです。
国民みんなで支え合う「国民皆保険制度」
日本では原則として、すべての国民が「公的医療保険(種類は問わない)」に加入することになっており、これを「国民皆保険制度」といいます。
加入者である国民それぞれが出し合った保険料は、加入者やその家族など(被扶養者)が病気やケガをしたときかかる医療費の一部などに当てられます。
つまり「国民皆保険制度」は、国民みんなで支え合うことにより成り立っているのです。
また「公的医療保険」には政府や企業、都道府県など、運営する保険者の違いによりいくつかの種類に分かれていますが、加入している保険の種類にかかわらず、全国どこでも平等な医療給付を得ることができます。
つまり日本は「国民皆保険」であることにより普段、病気やケガをしたときに医療機関で保険証を提示すると、医療費の3割を自己負担。
そして残り7割の医療費は、企業が納める健康保険料と公的医療保険加入者が納めた保険料から支払われます。
また被扶養者が小学校入学前であれば自己負担は2割に。さらに70歳以上の場合には、世帯所得などの条件により自己負担の割合が1割や2割に減ることもあります。
このように被扶養者の種類によって負担額は多少変動しますが、医療費の一部のみを負担するだけで、誰でも安心して治療を受けられることに変わりありません。
「国民皆保険」のおかげで、安心して暮らせていることを実感できたのではないでしょうか。
国民皆保険である公的保険の種類
日本には「国民皆保険制度」があるため、すべての国民は何らかの「公的医療保険」に加入する必要があるとお伝えしましたが、“何らかの”というのは、運営者の違いにより「公的医療保険」にはいくつかの種類があることを示しています。
公的医療保険の種類とは?
「公的医療保険」の種類と運営者(保険者)、そして、各公的医療保険の加入対象者(被保険者)を簡潔にまとめました。
公的 医療保険 の種類 | 運営者 (保険者) | 加入 対象者 (被保険者) |
---|---|---|
健康保険 | 全国健康保険協会(協会けんぽ)、各種健康保険組合(組合健保) | 企業の従業者や日雇労働者など |
国民健康保険 | 市町村、都道府県(2018年4月より) | 農業、自営業者、フリーター、退職者など |
共済組合 | 各種共済組合 | 国家・地方公務員や私学教職員など |
船員保険 | 全国健康保険協会 | 船舶の船員など |
後期高齢者(長寿)医療制度 | 後期高齢者医療広域連合 | 75歳以上の人および65~74歳で一定の障害の状態にある人 |
なお、加入対象者の多い「健康保険」と「国民健康保険」の2種類については、後ほど詳しくご紹介します。
保険証の色によって公的医療保険の種類がわかる
「国民皆保険」で加入すべき5種類の「公的医療保険」について、それぞれの営者や加入対象者をご紹介しましたが、「自分がどの保険に加入しているのかわからない」という方もいるかもしれません。
そんな方は、ぜひお手元に保険証をご用意ください。
実は保険証の色の違いによって、どの種類の「公的医療保険」に加入しているのかを大まかに判断することができます。
以下に、保険証の色と該当する「公的医療保険」の種類をまとめました。
ただし、保険証の色だけでは加入している保険の種類を正確に判断することはできないので、ひとつの目安としてくださいね。
保険証の色 | 公的 医療保険 の種類 | 特徴・情報 |
---|---|---|
青系 | 協会けんぽに加入の会社員やその扶養家族など | 民間の協会での運営が始まった2008年以降の保険証 |
黄色系 | 共済組合加入の国家・地方公務員や一部の後期高齢者医療制度に該当する者 | 公務員の場合は、保険証ではなく「組合員証」と記載されている |
赤・ピンク系 | 各自治体の国民健康保険や企業の健康保険組合の保険証など | 少なくとも、現在の協会けんぽや共済組合の保険証ではない |
灰色系 | 自治体が発行する介護保険証など | エリアや時期によって、通常の国民健康保険が灰色の場合もある |
紫系 | 国民健康保険や後期高齢者医療制度に該当している方など | 時期によって色が変わる場合もある |
緑系 | 国民健康保険や船員保険など | 船員保険のカード型保険証の色は黄緑色 |
社会保険と国民健康保険の違い
「社会保険」という言葉をご存知ですか?一般的に「社会保険」というと、会社員などが加入する「健康保険」と「厚生年金」の2種類を指す言葉として使われているようです。
しかし、本来「公的医療保険」とは、「社会保険制度」の1つであり、日本で設けられている「社会保険」には、以下の保険が該当します。
- 医療保険
- 年金保険
- 労災保険
- 雇用保険
- 介護保険
ただし、ここでは広義の「社会保険」ではなく、会社員などが加入する「健康保険」を「社会保険」として解説を進めていきます。
さて、自営業者などが加入する「国民健康保険」と会社員などが加入する「健康保険(社会保険)」は、身近な「公的医療保険」であり、どちらも多くの方々が加入しています。
では、それぞれの特徴や保険料の計算方法などから、2種類の保険の違いを確認していきましょう。
国民健康保険(国保)の特徴
「国民健康保険」の対象は、「社会保険」や「共済組合」などの「公的医療保険」に加入していない方が対象です。
例えば、自営業者とその家族、農業を営んでいる方、年金受給者、フリーター、長期在留する外国人などは加入する必要があります。
「国民健康保険」においては、“扶養”という考え方はなく、加入者1人ひとりが被保険者となるのが特徴です。
加入者1人ひとりが被保険者であることにより、国民健康保険料の計算は、各世帯の加入者数・前年の1月~12月の所得・年齢をもとに算出されます。
また保険料は住民票の世帯ごとに算出され、世帯主が世帯全員分の保険料を納めるという仕組み。
そのため世帯主本人が「国民健康保険」の加入者ではない場合でも、同世帯内に「国民健康保険」の加入者がいる場合には、世帯主に納税義務が生じます。
国民健康保険料の計算方法は各自治体により異なるため、お住まいの自治体の担当窓口や公式ホームページでチェックしてみてくださいね。
健康保険(社会保険)の特徴
「健康保険(社会保険)」には、全国健康保険協会が運営する「協会けんぽ」と各企業の健康保険組合が運営する「組合健保」の2種類あります。
「協会けんぽ」は中小企業が運営する場合が多く、「組合健保」はグループ企業や大企業が運営するケースが多いというのも特徴です。
また正社員だけでなく、パートタイムやアルバイトなどの短時間勤務の方も、労働時間などの要件を満たすと、「健康保険(社会保険)」に加入することになります。
扶養についての考え方は、「国民健康保険」と大きく異なります。
「健康保険(社会保険)」では、同一生計の配偶者や子ども、親などの親族を扶養に入れることができ、被扶養者が何人いようとも被保険者の健康保険料が変わることはありません。
保険料は、本人の標準報酬月額(4月~6月の給料の平均)をもとに計算します(標準報酬月額には、基本給のほか通勤手当や住宅手当、残業手当なども含まれる)。
また「国民健康保険」の場合は、被保険者が保険料の全額を支払いますが、「健康保険(社会保険)」の場合は、被保険者と事業所が折半で負担します。
なお、「船員保険」と「共済保険」の保障内容は、「健康保険(社会保険)」とほぼ同様です。
社会保険と国民健康保険の切り替えについて
前述のとおり「健康保険(社会保険)」と「国民健康保険」は加入対象者が異なるため、独立や退職、就職などの雇用環境の変化によって、保健の切り替え手続きが必要となります。
国民健康保険から健康保険(社会保険)への切り替え
「国民健康保険」から「健康保険(社会保険)」に切り替えるケースで考えられるのが、健康保険適用事業所に正社員、または労働時間の要件を満たしたパートタイムやアルバイトなどとして就職した場合です。
対象となる従業員は、各市区町村役場の担当窓口にて国民健康保険脱退のための手続きを行います。
健康保険(社会保険)から国民健康保険への切り替え
勤めていた会社を退職した際には、こちらのパターンの切り替えが必要です。実際の手続きとして、健康保険証の返却や「健康保険(社会保険)」の資格喪失手続きなどがあります。
ここで注意したいポイントは、「健康保険(社会保険)」の資格喪失が退職日の翌日付けであるということ。「健康保険(社会保険)」の資格喪失日から自動的に国民健康保険料が発生するため、早めの手続きがおすすめです。
公的保険以外に民間保険も必要?
インターネットやテレビなどで何種類もの民間医療保険のコマーシャルを目にしますよね。しかし「国民皆保険」により誰もが「公的医療保険」に加入している日本において、民間の医療保険に加入することにどのようなメリットがあるのでしょうか。
例えば、「健康保険(社会保険)」や「共済組合」の加入者は、病気やケガで3日以上連続して会社を休むと「傷病手当金」が給付されます。
さらに出産のため会社を休むと「出産手当金」が給付されるなど、一定期間の所得補償があります。しかし「健康保険(社会保険)」には、これらの制度はありません。
このように加入する「公的医療保険」の種類によっては、民間の医療保険や生命保険の商品を組み合わせて、万が一に備える方も多いようです。
また大ケガを負ったときや長期間の入院を伴う病気を患ったときには、医療費の負担軽減を目的とする「公的医療保険」だけでは、十分な保障を得られないと感じる方もいるようです。
そこで役立つのが、入院や手術にスポットを当てて保障を強化している民間の医療保険です。「公的医療保険」+入院・手術型の民間医療保険で、万全の体制を整えるのもよいアイデアといえるでしょう。
民間の医療保険にはさまざまな種類があるので、状況に合わせて適した商品を選びましょう。
まとめ:公的医療保険だけで心配なら、民間保険も検討してみよう
日本では、誰もが「公的医療保険」に加入しているため、病気やケガなどの治療費は一部の自己負担のみで済みます。
このように私たちが日々、安心して生活できているのは「国民皆保険」のおかげといっても過言ではないでしょう。
しかし「国民皆保険」で加入すべき「公的医療保険」にはいろいろな種類があり、保障内容も異なります。
そのため自分だけでなく、家族が加入している「公的医療保険」の種類や内容もしっかりと把握し、もし保障内容に不安があれば、民間の医療保険などで不足分を補うのもおすすめです。
民間の医療保険導入の相談や保険料のシミュレーションに関しては、お近くのファイナンシャルプランナーに相談してみてくださいね。
保険商品のご検討にあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり」「約款」などを必ずご覧ください。
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