【介護保険】要支援に認定されるのはどんな状態?利用できるサービスや申請方法を解説

国の介護保険制度は、介護認定によってサービスや自己負担額などが異なっていて、介護サービスの値段が低くなります。「要支援」は介護認定区分を大きく分けたうちのひとつですが、どのような状態だと要支援に認定されるのでしょうか。また、要介護との違いはどこにあるのでしょうか。
この記事では、介護保険制度の要支援について詳しく解説していきます。要介護との違いはもちろん、利用できる介護サービスの紹介や認定の流れも分かりやすく紹介していきます。
この記事は、次のような人にぴったりの内容になっています。
- 介護保険制度の要支援について知識を付けたい人
- 介護保険の要支援と要介護の違いが分からない人
- 介護保険制度の要支援で受けられるサービスが気になる人
それではまず、介護保険の要支援についての基礎からしっかり見ていきましょう。
介護保険の要支援とは
まず前提として、介護保険制度は認知症や寝たきりなどで継続的に介護が必要になった場合や日常生活のサポートが必要な状態になったときに、状況に応じた介護サービスを受けられるものです。
また、介護保険制度は、介護認定区分に応じて利用できるサービスに差があり、区分は大きく分けて要支援と要介護の2つがあります。さらに、要支援は要支援1と要支援2に分けられています。
要支援1と要支援2の具体的な違いは次の通りです。
要支援1
- 入浴や食事、排泄や移動などの日常的な生活の動作のほとんどを自分でこなせる
- 片足の立位保持や立ち上がりなどの動作に何らかの支えが必要になることがある
- 将来の介護予防のために支援が必要な状態
- 一部身の回りの世話に手助けや見守りなどの介助が必要な状態
要支援2
- 部屋の掃除や自分の身だしなみなどの動作をする能力が低下していて、何らかの介助を必要としている状態
- 片足の立位保持や立ち上がりなどの動作に何らかの支えがいる
- 両足での立位保持や歩行などの日常生活の動作をするために何らかのサポートがいることがある
- 何らかの支援が必要な状態ではあるが改善の可能性が高い
以上が介護保険の要支援の基本的な内容で、高齢者だからと言って誰でも要支援の認定がされるわけではありません。先に触れた通り、介護認定区分は大きく分けて要支援と要介護の2つがありますが、どのような違いがあるのか見ていきましょう。
要介護との違いは
要介護は介護保険の認定基準のうちのひとつで、介護認定区分は先に紹介した要支援1と要支援2を含めた7つに分けられています。
要支援の方が心身の状態や生活環境などが軽く、要介護の区分を表す数字が大きくなるほど便利で手厚いサポートが必要になる状態です。
また、介護保険の要介護は被介護者の状況に応じて全5段階に分けられていますが、区分認定をするときにチェックされる項目は次の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
生活機能 | 排泄、食事、外出、上衣の着脱などの日常生活に必要な行動ができるかなど |
起居動作・身体機能 | 麻痺や拘縮がないか、視力・聴力がどれくらいあるかなど |
精神・行動障害 | 過去1か月に生活をする上で不適当な行動があったか、頻度はどれくらいかなど |
認知機能 | 自分の名前や生年月日などを理解しているか、短期記憶ができるかなど |
社会生活への適応 | 簡単な調理や買い物、金銭管理などをできるかどうか、集団に適応する能力があるかなど |
続けて、介護保険の要介護1~5までの区分の違いを見ていきましょう。
要介護1
- 部屋の掃除や身だしなみを整えるときに何らかの手助けや見守りが必要な状態
- 片足の立位保持や立ち上がりなどの動作で何らかのサポートがいる
- 両足の立位保持や歩行など移動のときに何らかの支えがいるときがある
- 食事や排泄などの動作はほとんど自分でできる
- 理解能力の低下や混乱している様子が見られることがある
要介護2
- 部屋の掃除や身だしなみなどの生活の動き全般に手助けや見守りが必要な状態
- 片足の立位保持や立ち上がりなどの動作をするときに支えが必要になる
- 両足の立位保持や歩行などの移動に何らかのサポートがいる
- 食事や排泄をするときに何らかの介助がいるときがある
- 理解能力の低下や混乱している様子が見られることがある
要介護3
- 部屋の掃除や身だしなみなどがひとりでできない
- 片足の立位保持や立ち上がりなどの動作をひとりでできない
- 両足の立位保持や歩行などの移動がひとりでできない場合がある
- 自分で排泄ができない
- 理解の低下や何点かの不安行動が見られる
要介護4
- 部屋の掃除や身だしなみがほとんどできない状態
- 片足の立位保持や立ち上がりなどの動作がほとんどできない
- 両足の立位保持や歩行などの移動がひとりでできない
- ほとんど排泄ができない
- 理解能力の低下や多くの不安行動が見られる
要介護5
- 部屋の掃除や身だしなみができない
- 片足の立位保持や立ち上がりができない
- 両足の立位保持や歩行などの移動ができない
- 食事や排泄ができない
- 理解能力の低下が見られ、多くの不安行動がある状態
介護保険制度は、これまでに紹介した介護認定区分に応じて介護保険サービスの1か月の限度金額が設定されています。介護認定区分ごとの利用限度額(1か月あたり)と自己負担額の目安は次の通りです。
介護認定区分 | 利用限度額 | 自己負担額1割 | 自己負担額2割 |
---|---|---|---|
要支援1 | 50,030円 | 5,003円 | 10,006円 |
要支援2 | 104,730円 | 10,473円 | 20,946円 |
要介護1 | 166,920円 | 16,692円 | 33,384円 |
要介護2 | 196,160円 | 19,616円 | 39,232円 |
要介護3 | 269,310円 | 26,931円 | 53,862円 |
要介護4 | 308,060円 | 30,806円 | 61,612円 |
要介護5 | 360,650円 | 36,065円 | 72,130円 |
※介護保険における自己負担額は原則利用限度額の1割ですが、65歳以上で一定の所得がある場合は2割負担になります。
参考:サービスにかかる利用料|厚生労働省
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
それでは次に、介護保険の要支援に認定された場合に受けられる介護サービスにはどのようなものがあるのかを紹介していきます。
要支援に認定されると受けられるサービスがある
先に説明した介護保険の要支援に認定されると、介護予防サービスの利用ができます。介護予防サービスを利用するためには、介護予防ケアプランと呼ばれる介護予防サービス計画を作成する必要があります。
介護保険の要支援に認定された場合、介護予防ケアプランの作成は地域包括支援センターに依頼するのが一般的です。ケアマネジャーに委託するのもいいでしょう。介護予防支援事業者に依頼して完成した介護予防ケアプランに基づいて、介護サービス事業所と契約ができるので必ず用意しましょう。
日常生活支援総合事業や介護予防の実施後であれば、市町村で提供されている一般介護予防事業や介護予防サービスなどが利用できるようになります。
介護保険の介護予防サービスの目的は、要介護状態になるのを極力遅らせたり、要介護状態になるのを防いだりすることであり、要支援認定者の状態が悪化しないように改善を目指します。介護保険の介護認定者になった場合に利用できる介護予防サービスの具体的な内容としては、次のようなものがあります。
- 食生活の見直し
- レクリエーション
- 体操
- リハビリテーション
上記の例から分かる通り、介護保険の介護予防サービスはものを噛んだり飲み込んだり、他の人と会話したりすることで要支援認定者の生活の質をアップさせるケアを実施するサービスと言えます。
介護保険の介護予防サービスの種類は、大きく次の3つに分けられます。
- 介護予防サービス
- 地域支援型の予防サービス
- 地域密着型介護予防サービス
それぞれの介護予防サービスについて、もう少し詳しく解説していきます。
介護予防サービスは、介護保険で要支援に認定された人が住み慣れた環境で生活を継続できるようにサポートするサービスです。基本的には在宅で支援することになるためホームヘルパーが訪問するのが一般的で、要支援認定者ができるだけ自力で身の回りのことをこなすことを目指します。
介護保険の介護予防サービスの具体例としては、介護予防通所リハビリテーションや介護予防通所介護、介護予防訪問介護などがあります。
介護保険で利用できる地域支援型の予防サービスは、すでに認定された要支援状態から悪化するのを防ぐために、各自治体で実施されているサービスです。具体的には、介護予防一般高齢者施策や介護予防特定高齢者施策があります。
地域密着型介護予防サービスは、介護予防サービスと同様に介護保険の要支援認定者が住み慣れた環境で自立した生活を送れるように支援する介護サービスです。地域住民だけしか地域密着型介護予防サービスを利用できないのがポイントです。
具体的には、介護予防認知症対応型サービスや介護予防小規模多機能型居宅介護などがあります。
要支援に認定されると上記の3つの介護サービスが利用できるようになりますが、介護認定区分ごとに利用できる介護保険のサービスの目安は、次の表の通りになっています。
要支援・要介護区分 | 介護保険で利用できるサービスの目安 |
---|---|
要支援1 | 介護保険の介護予防サービス |
要支援2 | 介護保険の介護予防サービス |
要介護1 | 介護保険の介護サービス(施設・在宅サービス) |
要介護2 | 介護保険の介護サービス(施設・在宅サービス) |
要介護3 | 介護保険の介護サービス(施設・在宅サービス) |
要介護4 | 介護保険の介護サービス(施設・在宅サービス) |
要介護5 | 介護保険の介護サービス(施設・在宅サービス) |
ちなみに、介護保険の要支援に限らず、先に紹介した介護保険の限度額が適用される具体的なサービスは次のようなものがあります。
- 訪問介護
- 訪問入浴介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 通所介護
- 通所リハビリテーション
- 福祉用具貸与
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護
- 特定施設入居者生活介護(短期利用に限る)
- 定期巡回・臨時対応サービス
- 夜間対応型訪問介護
- 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 認知症対応型共同生活介護(短期利用に限る)
- 地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用に限る)
- 複合型サービス
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護や居宅療養管理指導などは、介護保険制度の限度額が適用されないので注意しましょう。
介護保険における要支援や要介護の認定は、審査会や主治医意見書の内容などを踏まえて実施されます。続いては、介護保険の要支援・要介護認定を受けるまでの実際の流れを詳しく解説していきます。
介護認定を受けるまでの流れ
介護保険の要支援・要介護に認定されるまでの一般的な流れは、次の通りになっています。
住民票がある市町村の窓口に認定の申請をする
- 主治医に意見書を書いてもらう
- 市町村の訪問調査を受ける
- 主治医の意見書と訪問調査の結果をもとに、コンピュータが一次判定を実施する
- 一次判定の結果をもとに、介護認定審査会が二次判定を実施する
- 申請者に審査結果が通知される(非該当で申請が取り下げられても自治体によっては一定のサポートが受けられる場合がある)
- 要介護認定された場合、介護支援サービス事業所に通所・短期入所するか入所するかのいずれかを選択できる(通所・短期入所の場合は介護計画を作る必要がある)、要支援認定された場合、地域包括支援センターに連絡をする(職員と介護予防ケアプランを作成する)
- 要介護の場合は介護サービス、要支援の場合は介護予防サービスの利用を開始する
- 有効期間に応じて要支援・要介護認定の更新をする
以上が要支援・要介護認定を受けるまでの流れですが、介護保険の要支援・要介護認定をする過程のひとつである介護保険の二次判定について、もう少し詳しく解説します。
介護保険の区分認定をするための二次判定は、コンピュータの分析判定では判断できない主治医の意見書の細かな内容や訪問調査の特記事項などの情報を含めて、一次判定よりも詳細に保健、医療、福祉の専門家による審査が実施されます。
なお、介護保険の要支援・要介護認定の申請には次の書類などが必要になるので、不足がないようにしっかり準備しましょう。
- 印鑑
- 介護保険要介護(要支援)認定申請書
- 介護保険被保険者証(申請者の年齢が40歳~64歳の場合は健康保険被保険者証)
- 主治医の意見書
介護保険の介護認定区分について理解しておこう
介護保険における要支援は、介護認定区分を大きくわけたうちのひとつで申請者の状況などをもとに区分が決定されます。要介護も介護認定区分ですが、要支援とは手助けなどが必要になる度合が異なっているのです。
要支援か要介護のどちらの区分に認定されるかによって、受けられる介護サービスや1か月の利用限度額などに違いがあります。
要支援・要介護の申請は住民票がある市町村の窓口で手続きをする必要があり、主治医の意見書や訪問調査などの結果に応じて区分が決定される仕組みになっています。
男性・女性ともに将来何らかのサポートが必要になる人が増加しています。物事の理解力や体力があるうちに、どのような介護サービスを利用できるのかあらかじめ知っておくことが大切です。
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