民間介護保険に加入するデメリットは?手厚い保障は本当に必要?

国の制度で公的介護保険がありますが、任意加入の民間介護保険の加入に注目が集まっています。民間の保険に加入すれば、保険料をプラスして払わなければいけないデメリットがあるのに、なぜ多くの人が加入を検討しているのでしょうか。
この記事では、民間介護保険のデメリットについて詳しく解説します。そもそも、公的介護保険にデメリットはないのかについても紹介するので、将来の介護のために必要な知識を得られます。
この記事は、次のような人にピッタリの内容です。
- 民間介護保険のデメリットが知りたい人
- 公的介護保険のデメリットが気になる人
- 民間の保険はデメリットを払拭するメリットがあるのか知りたい人
それではまず、民間介護保険に加入するデメリットを見ていきましょう。
民間の保険に加入するデメリットは?
民間介護保険に加入するデメリットは次の通りです。
- 公的介護保険とは別に保険料を支払う必要がある
- 保険会社の独自基準が適用される保険だと、支払い基準を満たせないケースがある
- 場合によっては保険会社に健康状態を告知しなければいけない
厚生労働省の「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査(速報版)(https://www.jili.or.jp/press/2018/nwl4.html)」によれば、世帯主の介護保険の納付月額平均額は、8.6万円(2018年)で、配偶者の介護保険の納付月額平均額は6.1万円(同年)です。単純に考えると夫婦が支払う介護保険費用は、8.6万円+6.1万円で14.7万円になります。
民間介護保険に加入すれば何らかの障害になって将来介護が必要になったときに手厚い保障が得られるとは言え、月にこれだけの金額を負担する点は大きなデメリットになります。
しかし、民間介護保険に加入するとデメリットだけでなく、数多くのメリットもあるのです。デメリットを把握した上でメリットに魅力を感じられるなら、民間の介護保険に加入すべきだと言えるでしょう。
民間介護保険に加入するデメリットに対して、メリットは次の通りです。
- 公的介護保険にプラスして保障を手厚くできる
- 国の制度よりも対象年齢の幅が広いので安心
- 住民税や所得税を減税できる(生命保険控除)
- 保険料払い込み免除が適用される場合がある
民間の介護保険に加入するデメリットを払拭させるメリットとして一番大きいのは、充実した保障を得られる点です。公的介護保険だけではこれから先に要介護状態になっても、自己負担額が大きくなるデメリットがあります。
民間の介護保険に加入すると保険料を負担する目先のデメリットがありますが、何も準備しないままだと老後にデメリットを被る可能性があるのです。
次に、公的介護保険のデメリットを見ていきます。まずは、公的介護保険の基本を押さえてからデメリットを見ていきましょう。
介護保険の基礎知識
公的介護保険は急速な高齢社会を背景に社会的なデメリットを払拭すべく2000年に導入された制度で、40歳になると強制的に介護保険料が徴収される仕組みです。
被保険者が65歳以上の第1号被保険者であれば、要介護状態になると保障が適用されます。具体的な介護サービスについては後ほど紹介します。
公的介護保険の要介護に認定されると、自己負担1割で介護サービスが受けられるのが魅力です。ただし、64歳以下の第2号被保険者が要介護状態になった場合は原因が特定疾病でないと、保障されないデメリットがあります。
公的介護保険は、被介護者の身体状態などを基に要介護度を区分分けしていて、利用できるサービスや月々の限度額が定められています。
場合によっては、保険料が減算されることもありますが国の制度はメリットだけでなく、デメリットもあるのです。公的介護保険は要支援以上の介護区分に認定されなければ、保障が受けられないデメリットがあります。
また、次のような人は公的介護保険の適用除外になるデメリットがあるので注意が必要です。
- 適用除外施設(身体障害者養護施設など)の入所者
- 日本国内に住所がない人
- 短期滞在の外国人(在留見込期間・在留資格が3か月以下)
みずほフィナンシャルグループを主要株主に持つ、朝日生命保険のサイトによると、公的介護保険でホームヘルパーが被介護者以外に関わる家事代行をできると誤解していた人が多いことが分かっています。
同調査では、そもそも公的介護サービスでどこまでのサポートが受けられるかを理解していない人が多いことも分かりました。いずれのケアも公的介護保険では保障されないサービスなので、国の制度のデメリットと言えます。
公的介護保険で利用できると誤解していたこと (%)
調査対象者 | 被介護者 | 介護提供者 |
施設入所後の費用(食事代・光熱費など) | 36.1 | 42.2 |
ホームヘルパーが利用者以外の家事代行をすること | 23.2 | 54.0 |
ホームヘルパーが外出時に車を運転すること | 22.5 | 48.6 |
ホームヘルパーの医療に関する行為(医師とのやりとりなど) | 16.6 | 51.8 |
介護タクシーの利用 | 17.8 | 41.2 |
その他 | 1.2 | 1.9 |
わからない | 43.6 | 7.3 |
参考:朝日生命保険「要介護認定後の暮らし」と「民間介護保険に対する意識」に関する実態調査
https://www.asahi-life.co.jp/company/pressrelease/pdf/20130815_01.pdf
では、公的介護保険の要介護状態に認定されると、どのような介護サービスが保障されるのでしょうか。保障される介護サービスの種類から公的介護保険のデメリットを見ていきます。
要介護区分ごとの公的介護保険が適用される介護サービス・プラン(在宅)一覧は、次の通りです。
介護区分 | 1か月の支給限度額 | 保険が適用される介護サービスの目安 |
---|---|---|
要支援1 | 50,320円 | 週2回~3回のサービス
|
要支援2 | 105,310円 | 週3回~4回のサービス
|
要介護1 | 167,650円 | 1日1回ほどのサービス
|
要介護2 | 197,050円 | 1日1回~2回ほどのサービス
|
要介護3 | 270,480円 | 1日2回ほどのサービス
|
要介護4 | 309,380円 | 1日2回~3回ほどのサービス
|
要介護5 | 362,170円 | 1日3回~4回ほどのサービス
|
公益財団法人生活保険文化センター|公的介護保険で受けられるサービスの内容は?
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/nursing/11.html
その他、被介護者の住まいがある市町村によっては、地域ならではのコミュニティを大切にした介護サービスがある場合も多いです。
逆に言えば、ある地域では一般的な介護サービスであっても、他の地域では用意されていないケースがある点がデメリットです。介護に関する集中講習を受けられることもあるので、最新の情報をインターネットでチェックしてみましょう。
上表から、公的介護保険の保障範囲では施設入所後にかかる食事代や光熱費などの費用やホームヘルパーが利用者以外に関わる家事代行・運転・医療行為に対応できないデメリットがあると分かります。
また、介護タクシーの利用に関する費用も賄えない点は公的介護保険のデメリットと言えるでしょう。
民間の保険と国の制度のデメリットを押さえた上で、民間の保険に加入すべき理由を見ていきましょう。
民間の保険に加入する必要性が高まっている
公的介護保険だけでは保障が十分でなくデメリットがあるとわかりましたが、実際、どれくらいの人がデメリットに気付いて民間の介護保険に加入しているのでしょうか。
厚生労働省の「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査(速報版)」によると、民間介護保険加入世帯ベースの介護保険の加入率は次の通りになっています。
(%)
世帯 | 世帯主 | 配偶者 | |
---|---|---|---|
平成30年 | 14.1 | 10.5 | 7.8 |
平成27年 | 15.3 | 11.8 | 7.9 |
平成24年 | 14.2 | 10.8 | 7.6 |
平成21年 | 13.7 | 11.1 | 6.2 |
平成18年 | 16.1 | 12.9 | 7.3 |
参考:https://www.jili.or.jp/press/2018/pdf/h30_zenkoku.pdf
※かんぽ生命や損害保険は集計対象外
民間介護保険の必要性が高まっているのに、国の制度のデメリットに気付いていない人が多く、加入者はまだ少ない現状です。同調査によると医療保険・医療特約の世帯加入率は約9割であることから、介護保険に加入する人が少ないことが分かります。
高齢・長寿社会が加速する中、今後は公的介護保険の保障が縮小される可能性が非常に高く、将来デメリットを感じることが予想されます。保障が必要になってから介護保険に加入しても間に合いません。確かに民間の介護保険に加入すると冒頭に紹介したデメリットはありますが、デメリット以上にメリットが大きいのです。
朝日生命の調査によると介護サービスを利用している人が、介護の必要な金銭的負担で一番大きいと感じているのは公的介護保険が適用されない自己負担額と答えています。
続いて、通院や外出時の交通費、オムツなどの介護用品の費用を負担に感じている人が多いことが同調査で分かりました。
(%)
公的介護保険の自己負担額 | 35.8 |
通院や外出時の交通費 | 34.4 |
公的介護保険適用外の介護用品の費用(オムツなど) | 24.6 |
公的介護保険適用外の施設入所後の費用(食事代・光熱費など) | 21.1 |
公的介護保険適用外(ヘルパーが対応できない)の家事代行費用 | 15.0 |
その他 | 12.3 |
わからない | 23.8 |
参考:朝日生命保険「要介護認定後の暮らし」と「民間介護保険に対する意識」に関する実態調査
https://www.asahi-life.co.jp/company/pressrelease/pdf/20130815_01.pdf
つまり、やはり国の介護保険はデメリットが多く、保障が十分だとは言えません。公的介護保険は介護にかかる費用をすべて賄えないデメリットがあるので、民間介護保険に加入して公的介護保険のデメリットをフォローすることが大切です。
また、公益財団法人生命保険文化センターの調査
(http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/nursing/4.html)によると、介護に必要な平均期間は4年7か月で、公的介護保険が適用されるサービスの自己負担額を含めると、介護に必要な費用は月に7.8万円です。
単純に考えると介護に必要なお金は、4年7か月×7.8万円=約430万円で、一時的に必要になる介護費用の平均額が約70万円なので介護費用の総額は約500万円にもなります。
介護を在宅で家族がするか、老人ホームなどの施設を利用するかによっても必要な資金は変わりますが、500万円という数字は介護には想像以上に大きなお金が必要だということを物語っています。
民間介護保険は、40歳未満でも加入できる保険商品が取り扱われています。公的介護保険は40歳以上にならないと保険加入自体できないデメリットがありますが、民間介護保険であればそのデメリットを払拭できます。
また、公的介護保険の要介護基準に準じて保障が適用される保険もありますが、保険会社が独自に基準を設定していることがあります。
公的介護保険では要介護状態と認められないと保障が受けられないデメリットがありますが、民間介護保険ならそのデメリットを払拭して保障が適用されるケースも珍しくありません。
そして、公的介護保険では次のような費用は自己負担になるデメリットがありますが、民間介護保険だと保障が適用される点が非常に魅力的です。
- 病院や施設までの交通費
- 家事代行サービス費
- 配食サービス費
- 施設サービスの食費や居住費
- 介護に必要な消耗品費(おむつ代など)
ここまでの説明から、民間の介護保険は国の制度が抱えるデメリットを払拭するメリットが多数あることが分かります。公的介護保険にプラスして保険料を支払うデメリットはありますが、将来介護が必要な状態になった場合に苦労しないためにも目先のデメリットだけに着目しないことをおすすめします。
民間の保険に加入をおすすめする人
公的介護保険にプラスして、民間の介護保険に加入すべき人は次のような人です。
- 周囲に面倒を見てくれる家族がいない人
- 民間の介護保険のデメリットを見てもメリットが大きいと感じた人
- 将来のために手厚い保障を準備したい人
将来のための保障を手厚くするためには、早期にお金を準備するデメリットがあります。しかし、民間の介護保険は公的介護保険のデメリットをうまくフォローできるだけの魅力がある保険商品です。
民間の介護保険の加入者はまだ少なく、身近に感じられない点をデメリットとする人もいますが、長期的に考えれば民間介護保険に加入する必要性は明らかでしょう。
民間の介護保険はデメリットだけでない
記事の冒頭で民間の介護保険に加入するデメリットについて紹介しましたが、民間の保険に加入するとデメリットを被るだけではありません。
老後生活の不安が高まっている中、保険料を支払う目先のデメリットを気にして、必要な保障を得るための準備ができない方が大きなデメリットになります。
確かに、民間介護保険はすべての人が加入すべき保険とは言えませんが、今回紹介した特徴に該当する人は加入を検討してはどうでしょうか。
保険商品のご検討にあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり」「約款」などを必ずご覧ください。
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