介護保険とはどんな制度?対象者や利用可能なサービスを紹介

介護サービスの宣伝をチラシやポスターで見かけることも多くなり、日赤・赤十字病院のロゴが入ったパンフレットがポストに入れられていることも珍しくなくなりました。
介護従事者になろうと本で勉強したり、専門学校で学んだりする人も増えています。それくらい介護とは、私たちの身近な存在になりつつあるのです。
公的介護保険とは2000年に導入された制度で、2015年に大きく改正されました。
さらに2018年8月から一部の介護保険被保険者の自己負担割合が3割になって話題になりましたが、そもそも国の介護保険とはどのような制度内容か知っていますか。
今回は公的介護保険とはどんな制度か、基礎から理解できるわかりやすい記事になっています。
この記事は、次のような人にピッタリの内容です。
- 介護保険とは何かいちから知りたい人
- 介護サービスとは何か基礎から把握したい人
- 介護保険の利用限度額とはどれくらいか気になる人
まずは、介護保険とは何か、基本的な内容から解説していきます。
介護保険とは
介護保険とは、急加速する高齢社会を背景に2000年に新たに導入された制度です。介護保険とは何かきちんと制度内容を理解している人がそれほど多くない理由は、他の保険制度と比較すると導入されてからそれほど長い期間が経っておらず、何度も改正されていることにあります。
では、介護保険が導入された理由とは何なのでしょうか。
介護が必要な高齢者が増加する一方で、少子化や核家族化も深刻化しています。介護保険制度が導入される以前は家族で介護をするのが一般的でしたが、さまざまなことが要因となり家族だけで介護を担うことは難しい状態になったと判断した国が動いて介護保険制度が生まれたのです。
介護保険制度とは、介護が必要な状態になった人が安心して暮らせるような社会にするために導入された制度です。
介護保険とは社会状況を改善するために導入された制度なので、時代の流れに合わせて必要な支援をサポートするために何度も改正されています。
それでは続いて、公的介護保険とはどのような仕組みで運用されている制度なのか見ていきましょう。
国の保険の仕組みとは
この章では公的介護保険の対象者や実施者、保険料を中心に紹介し、国の介護保険の仕組みとはどのようなものかを解説します。
公的介護保険の対象者とは年齢が40歳以上の日本国民です。もっと詳しく説明すると、介護保険の被保険者が40歳になる誕生日の前日が属する月から介護保険の被保険者となり、所定の介護保険料を支払うことになります。介護保険料の支払い方法や金額については後ほど詳しく解説します。
公的介護保険とは加入者の収入や年齢などに適した保険料を集めて運営されている制度で、介護が必要なときは認定を受ける手続きを取れば、所定の介護サービスが受けられる仕組みになっています。
ちなみに、介護サービスは社会政策的観念から、原則は消費税の課税対象外になっています。一方で住宅改修や福祉用具にかかる費用など、一部のサービスは課税対象になっていて同じ介護サービスでも違いあることは覚えておきましょう。
介護保険を運営する実施者の主体は市町村で、保険料を財源に介護保険の被保険者に対してさまざまな介護サービスが提供されています。具体的な介護サービスの種類については後ほど詳しく紹介するので、しっかりチェックしてください。
なお、公的介護保険は加入者の年齢によって被保険者を次の2つに分けています。
- 第1号被保険者:65歳以上
- 第2号被保険者:40歳以上65歳未満
厚生労働省の平成30年度「公的介護保険制度の現状と今後の役割(https://www.mhlw.go.jp/content/0000213177.pdf)」によると、介護保険が導入された2000年の第1号被保険者の人数は2,165万人であるのに対して、2018年は1.6倍の3,492万人に増加しています。
時代とともに、介護保険の被保険者は増えていることは押さえておきましょう。寝たきりになるなど介護が必要な状態になる要因とは、老化だけではなく事故などによる骨折などもあります。
第1号被保険者・第2号被保険者のいずれも介護保険料を医療保険料と合わせて納付します。第2号被保険者の中には、「介護保険料とはいつから納付しなければならないのか」不安になる人もいますが、基本的には気付かない間に納付しています。
会社に勤務していれば給与や賞与から天引きで介護保険料が納付されますが、国民健康保険の加入者については、医療保険料と合わせて口座振替や納付書で介護保険料を支払う必要があり、会社員や公務員とは納付方法に違いがあることは覚えておきましょう。
40歳から65歳になるまでの間は介護保険を以上のように納付しますが、第1号被保険者になると原則年金から天引きで保険料を納めることになります。同じ介護保険制度の被保険者でも種類によって介護保険料の納付方法が異なることは知っておくと安心です。
続いては、先に少し触れた介護保険が適用される介護サービスにはどのようなものがあるのかチェックしていきましょう。
利用できる介護サービスの種類
公的介護保険が適用される介護サービスは多岐にわたりますが、大きく分けると次の3種類のサービスに分けられます。
- 施設サービス
- 居宅サービス
- 地域密着型サービス
介護保険が適用されるそれぞれのサービス内容について、ポイントを絞って分かりやすく紹介していきます。
施設サービス
施設サービスとは、在宅による介護が難しい被介護者が次の3つの施設で介護を受けるサービスです。
- 介護老人保健施設
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護療養型医療施設
各施設によって提供されるサービスの種類や環境などが異なる違いはありますが、いずれも市町村や医療法人が中心になって各施設を運営しています。
居宅サービス
居宅サービスとは、被介護者宅で介護や看護の支援を受けられるサービスで、非常にたくさんのサービスがあります。
居宅サービスには具体的にどのような種類があるのか把握するために、実際に提供されているサービスの一例を紹介します。
- 訪問看護
- ホームヘルプサービス(訪問介護)
- 夜間対応型訪問介護
- 訪問入浴介護
- 訪問リハビリテーション
- デイサービス(通所介護)
- ショートステイ(短期入所生活介護)
- グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
- 福祉用具の貸与
- 住宅の改修
居宅サービスとは、介護職員に自宅を訪問してもらう介護サービスだけでなく、日帰りで施設に通所したり、一時的に介護が必要になったりする場合のサポートが受けられるサービスです。
その他、車いすなどの福祉用具のレンタルができ、居宅サービスとは介護の自己負担額の軽減に繋がるサービスと言えます。
地域密着型サービス
地域密着型サービスとは、2006年から新たに導入されたサービスです。
ある程度の人数で介護を受けることで認知症の悪化を防ぐサービスや24時間巡回対応のサービスなど、地域に密着した介護サービスが受けられるのが特徴です。
自治体によっては、被介護者宅に救急で来てくれるサービスを運営しているところもあり、地域密着型サービスは他の介護サービスよりも柔軟に対応してもらえる点がポイントと言えます。
ここまで公的介護保険で利用できるサービスにはどのような種類があるか見てきましたが、それぞれの介護サービスの利用者とはどれくらいなのでしょうか。
先に紹介した厚生労働省の「公的介護保険制度の現状と今後の役割(https://www.mhlw.go.jp/content/0000213177.pdf)」の統計によると、公的介護保険制度が導入された2000年と2018年の各介護サービス利用者の比較は次の通りになっています。
サービス名 | 2000年4月 | 2018年4月 |
施設 サービス | 52万人 | 93万人 |
居宅 サービス | 97万人 | 366万人 |
地域密着型 サービス | ― | 84万人 |
計 | 149万人 | 474万人 |
介護保険はどのように利用するのか、利用するまでの具体的な流れを見ていきましょう。大まかには次の流れで介護保険が適用されて、介護サービスを利用できるようになります。
- 要介護認定の申請手続きをする
- 要介護認定のための調査実施
- 要介護認定の結果受理
- 介護サービス計画を作成
- 介護サービスの利用開始
それぞれの過程について、ひとつずつ詳しく解説していきます。
要介護認定の申請は、介護保険の保険者である市区町村の窓口で手続きをします。
申請に必要な書式は窓口に用意されていますが、インターネットからダウンロードできるのでスムーズに手続きをしたい人は事前に書式を記入してから窓口に行きましょう。
自分で手続きするのが難しい場合は、介護保険施設や居宅介護支援事業所などに代行の依頼もできます。
要介護認定の申請手続きが完了すると、調査員が被介護者の自宅などを訪問して日常生活や心身の状況をチェックし、認定調査票を作成します。
要介護認定では1次判定と2次判定が厳正に執り行われます。1次判定とは、調査員が作成した認定調査票を元にコンピュータで行われる判定です。
2次判定は、1次判定の結果と主治医の意見書や認定調査票中の特記事項をもとに要介護認定審査会で実施されるので結果が出るまでしばらく待ちましょう。
要介護区分が決定したあとは、介護サービス計画書を作成する必要があります。
介護サービス計画書とは、どの介護サービスをいつどれくらい使うのかなどを明記した書類です。自分で作成もできますが、ケアマネジャー(介護支援専門者)に依頼した方がいいでしょう。ケアマネジャーとは介護に関する専門的で幅広い知識を持った有資格者です。
介護サービス計画書の作成をケアマネジャーに依頼しても利用者は費用を負担する必要がないので、介護サービス計画書の作成を依頼した方が無難です。
作成した介護サービス計画書をもとに、事業者から介護サービスを受けられるようになります。介護サービスを提供する事業所では、個別援助計画が立てられ利用者ひとりひとりに適した介護サービスが受けられるように配慮されているので安心です。
支給限度額が決められている
介護サービスの料金は全額保険で賄えるわけではなく、支給限度額が定められています。支給限度額は被介護者や世帯の収入によって異なりますが、原則サービス費用の1割を自己負担することになります。
介護保険の支給限度額は要介護区分によっても異なっていて、自己負担が1割か2割の場合、要介護区分ごとの支給限度額は次の通りです。
介護区分 | 支給限度額 (ひと月) | 自己負担額 (1割) |
---|---|---|
要支援1 | 50,030円 | 5,003円 |
要支援2 | 104,730円 | 10,473円 |
要介護1 | 166,920円 | 16,692円 |
要介護2 | 196,160円 | 19,616円 |
要介護3 | 269,310円 | 26,931円 |
要介護4 | 308,060円 | 30,806円 |
要介護5 | 360,650円 | 36,065円 |
参考:サービスにかかる利用料|厚生労働省
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
上表の支給限度額を超過する介護サービスを受けた場合は、基本的に全額自己負担になります。また、次の費用は公的介護保険が適用されず、全額自己負担になり注意が必要です。
- 短期入所サービスの居住費・食費
- 施設サービスの居住費・食費
- 通所サービスの食費
なお、介護保険は介護保険法に基づいて運営されていますが、この介護保険法は3年に1度見直しが実施されます。2019年現在の公的介護保険のサービスとはどのようなものか説明してきましたが、今後も更新される可能性が高いのです。
現状の情報を認識することも大切ですが、日ごろから介護保険に関する情報をチェックすることは将来の自分の生活を考えると非常に重要です。
介護保険は社会全体で介護を支える制度
公的介護保険とは高齢社会を背景に導入された制度ですが、保障が手厚いとは言えず、今後財源が足りずに制度が改正する可能性が十分にあります。
つまり、自分の老後の準備は自分でするということはとても大切なポイントなのです。
まずは、すでに加入している終身保険などの保険内容を見直すべきでしょう。せっかく将来のために保険に入っているのにもかかわらず、保障内容が被っていては意味がないです。
webサイトを見れば最新の介護情報にはどのようなものがあるかや具体的な保障プランがいつでも把握できます。
また、介護保険は最近では生保会社だけでなく、たくさんの会社で取り扱われている保険商品になっています。
必要な保険に加入していなければ将来安心して生活を送れなくなるリスクがあるので、この機会に民間介護保険への加入を考えてみるのもいいでしょう。
自分に必要な保険の保障とは何かを保険会社など介護保険に詳しい知識を持った人に聞くことも大切です。
保険商品のご検討にあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり」「約款」などを必ずご覧ください。
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