火災保険の保険期間が10年から5年に?注意点やデメリットを解説
賃貸物件を借りる際や住宅を建築・購入する際に加入する火災保険に、2022年10月以降大きな変化が訪れました。
そこで今回は、火災保険の保険期間が最長5年に変更されたことの背景を知るとともに、変更後に懸念されたメリットやデメリットについて詳しく解説していきます。
この記事は5分程度で読めます。
火災保険の保険期間が10年から5年に?
火災保険の保険期間は最長10年となっていましたが、2022年10月より最長5年に短縮されました。
保険期間が10年から短縮検討された背景
なぜこういった保険期間の短縮が検討されたのでしょうか?
災害発生リスクの予測が困難
火災保険の保険料を決める際には、最長10年間の契約期間中に、自然災害発生率がどのくらいあるかが大きなポイントになっています。
近年はゲリラ豪雨が多発したり、大きな地震や噴火も定期的に起きたりしています。
また、地球温暖化の影響で異常気象も起きていることから、今後の自然災害発生リスクを予測することが非常に難しい状況です。
損害保険会社の収支悪化に歯止めをきかせたい
ここ数年の大型台風やゲリラ豪雨などの被害によって、損害保険会社は多額の保険金を支払ったため、経営収支が悪化している傾向にあります。
ではどのくらいの保険金が支払われたのか、参考までに日本損害保険協会がまとめた「主な風水災等による保険金の支払い(2020年3月末時点)」をご紹介します。
【過去の主な風水災等による保険金の支払い】
災害発生日 | 災害名 | 発生地域 | 支払保険金(億円) |
2018.9.3~5 | 平成30年台風21号 | 大阪・京都・兵庫等 | 10,678 |
2019.10.6~13 | 令和元年台風19号 | 東日本中心 | 5,826 |
1991.9.26~28 | 平成3年台風19号 | 全国 | 5,680 |
2019.9.5~10 | 令和元年台風15号 | 関東中心 | 4,656 |
2004.9.4~8 | 平成16年台風18号 | 全国 | 3,874 |
2014.2月 | 平成26年2月雪害 | 関東中心 | 3,224 |
1999.9.21~25 | 平成11年台風18号 | 熊本・山口・福岡等 | 3,147 |
2018.9.28~10.1 | 平成30年台風24号 | 東京・神奈川・静岡等 | 3,061 |
2018.6.28~7.8 | 平成30年7月豪雨 | 岡山・広島・愛媛等 | 1,956 |
2015.8.24~26 | 平成27年台風15号 | 全国 | 1,642 |
保険料の値上げだけでは対応できない
具体例で考えてみましょう。
今年、火災保険に10年契約一括払いで加入した方がいるとして、損害保険会社が翌年火災保険の保険料を値上げしたとします。
しかし、この契約者は10年分の保険料を一括で支払っているので、値上げされた保険料で支払うのは9年先になります。
これでは損害保険会社はせっかく保険料を値上げしても反映されるのが9年先になるため、収支がなかなか改善されなくなってしまいます。
そこで、火災保険の保険期間を5年に短縮することで、遅くても4年後には値上げした新保険料で契約者から徴収することができるので、より早期に収支改善できる可能性が出てきます。
火災保険の保険期間が5年になるメリットやデメリットは?
メリット
火災保険が5年になったメリットとして、次の4つの点が挙げられます。
- 一度に支払う保険料が少なくて済む
- 火災保険の補償の見直しがしやすい
- 契約内容を把握しやすい
- 地震保険と同時に管理できる
ではそれぞれのメリットについて確認していきましょう。
一度に支払う保険料が少なくて済む
火災保険の保険料を一括で支払う場合、10年分を一括で支払うよりも5年分を一括で支払うほうが保険料が少ないため、一度に出費となる金額が少なくて済みます。
火災保険の補償の見直しがしやすい
火災保険もほかの保険と同様に、加入した後も定期的に補償の見直しをする必要があります。
同じ住居に住んでいる場合でも、増築や改築をすればその都度保険金額を増額したり、家族構成が変われば家財の補償額を増減したりすることで、万が一の場合に適切な補償を受けることができます。
しかし、実際には火災保険の更新のタイミングに内容を確認する方が多いと思います。
契約内容を把握しやすい
10年契約の場合、どのような補償内容で火災保険に加入したのかを正確に覚えているのは難しいでしょう。
そのため、本来なら火災保険から保険金を受け取れる損害を受けたとしても、そのことに気づかずに保険金の請求漏れとなる可能性があります。
しかし、5年に一度契約更新のタイミングで補償内容を確認できれば、「この損害は火災保険の補償対象になる」と判断しやすくなるため、保険金請求漏れを防ぐ効果もあります。
地震保険と同時に管理できる
地震保険は単体では契約できず、火災保険に付随するかたちで契約をしますが、保険期間は最長5年となっています。
デメリット
一方で、保険期間が5年契約に短縮されたことで、以下のようなデメリットもあります。
- 保険料の支払総額が増える
- 更新する手間が増える
それぞれについて解説します。
保険料の支払総額が増える
保険料を一括払いにする場合は割引が適用されますが、10年一括払いと5年一括払いとでは割引率が異なり、より長期である10年一括払いの方が割引率が高く、保険料の総支払額が少なくなることがほとんどです。
しかし、5年に短縮されると最大でも5年一括払いしか利用できないので、長い目で見ると保険料の支払い負担が増加することになります。
更新する手間が増える
火災保険の保険期間が短くなれば、それだけ更新手続きをする機会も多くなり、手間が増えるというデメリットもあります。
しかし、先ほども触れましたが、火災保険の補償内容を見直しする良いチャンスだと捉えれば、5年に一度くらいがちょうど良いかもしれませんね。
参考:保険期間短縮化は過去にもあった
火災保険の保険期間は最長10年から5年に短縮化されましたが、実は過去にも保険期間が短縮化されたことがありました。
2015年9月以前は火災保険の保険期間は最長36年まで可能で、住宅ローンを組んだ際に加入すれば、完済するまでそのまま継続することができる年数でした。
しかし、今回の保険期間短縮の理由と同様に、台風などの自然災害の増加による保険金の支払いが高額になったことを主な理由として、2015年10月からは最長でも10年契約に変更されたのです。
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まとめ
2022年度の後半を目安に、火災保険の保険期間が現行の最長10年から5年に短縮された背景には、10年間のリスク予測が困難であることと、損害保険会社の収支が悪化していることが主な理由です。
私たち契約者にとっては、保険料の総支払額が高額になるといったデメリットがありますが、一度に支払う保険料が少額で済むことや補償の見直しがしやすいといったメリットもあります。
保険料が高額になるのは家計的にはマイナスですが、だからといって補償内容を削るといったことはせずに、適切な補償額を付けておくことが大切です。
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