積立に使える個人年金保険の貯蓄効果やデメリットを解説

「老後に備えて、今からお金を積み立てたい」
そんな方に人気なのが、個人年金保険。一定期間保険会社に積立金として保険料を払い込み、所定の年齢になった時に年金の形でお金を受け取る保険です。
老後の資金を貯めるには様々な方法がありますが、できることなら手軽な方法で貯めたいという方も多いでしょう。個人年金保険による積立は、保険に加入しお金を払っていくだけで良いので、非常に簡単です。
今回は、個人年金保険による老後資金の積立について、メリットやデメリット、積立NISAとの比較などの点から説明していきます。個人年金保険による積立に興味のある方はぜひ参考にしてください。
目次
個人年金保険を使って積立
「人生100年時代」と言われる今、老後資金の準備はあらゆる世代にとって大きな問題になっています。国の年金制度だけでは十分とは言えず、働いている間にいかに貯蓄をしておくか頭を悩ませる方も多いでしょう。
そんな中で、老後資金の積立方法の一つとして個人年金保険があります。
個人年金保険とは、契約者が一定の期間保険料を支払い、積み立てたお金を年金の形で支給する保険です。契約時に定めた年齢を迎えた時から所定の期間、もしくは一括で年金が支払われます。
支給される年金は、積立金に一定の利率が加えられた金額となるため、自分が支払った保険料総額よりも多くの年金総額が支給されるケースもあります。
ただし、もし年金支給期間前に被保険者が死亡した場合には、支払った保険料と同額の年金しか戻ってきません。
個人年金保険は、年金の受取期間や年金の運用方法によって種類を分けることができます。
確定年金
確定年金は、被保険者の生死にかかわらず、一定期間年金を受け取ることができるタイプです。年金の受取期間中に被保険者が死亡した場合には、年金は遺族に支給されます。
年金の受取期間は5年や10年のものが多い傾向にあり、様々な保険会社から保険商品が販売されています。
終身年金
終身年金は、被保険者が死亡するまで一生涯年金が支払われるタイプです。被保険者が死亡した後は、遺族に対しても年金が支払われることはありません。
死亡するまで年金が支払われるため、長生きをすればするほどお得です。しかし、早くに亡くなってしまった場合には、支払った保険料よりも少ない額しか支給されない「元本割れ」になってしまうケースもあるため、注意が必要です。
ただし、保険商品によっては、年金の支払い年数を一定期間保証する「保証期間」が付いたものがあり、保障期間中に被保険者が死亡した場合には遺族に年金が支払われます。
終身年金の注意点は、保険料が高い点。年金の支払い期間が長いため、その分保険料が割高になってしまいます。また、保証期間が付いた場合には、さらに保険料が高額になります。
有期年金
有期年金は、被保険者が生存している限り、所定の期間年金を受け取れるタイプです。
所定の期間ずっと生存していた場合には、受け取れる年金額は確定年金よりも多くなりますが、早く亡くなった場合には元本割れしてしまいます。
有期年金も、終身年金と同様に「保証期間」が付いた保険商品があり、保証期間中に被保険者が死亡した際には年金が遺族に支給されます。
有期年金は、個人年金保険の中で最も保険料が割安ですが、保証期間が付いた場合には保険料が少し割高です。
定額年金
定額年金は、受け取ることができる年金の金額が契約時に定められるタイプの個人年金保険です。
定額年金では、一定の利率で保険料が積み立てられていきます。利率が変わらないため、保険に加入した時点で将来受け取ることができる金額がわかるのです。
早い段階でもらえる年金額がわかるため、将来のマネープランを立てやすい保険と言えるでしょう。
変額個人年金
変額個人年金は、将来支給される年金の金額が定まっていないタイプの個人年金保険です。
というのも、変額個人年金は保険会社が積立金を運用し、その運用実績に応じて年金額が決まるのです。
もし積立金の運用が上手くいった場合には年金額が増加しますが、上手くいかなかった場合には元本割れするリスクもあります。保険というよりは、投資のようなイメージが近いでしょう。
外貨建て年金
外貨建て年金は、その名の通り外貨で積立金の運用を行うタイプの個人年金保険です。
為替レート次第で運用実績が変わるため、こちらも保険というよりは投資に近いイメージでしょう。他の個人年金保険と比べて、為替手数料や解約手数料などのコストがかかるため、保険料は割高になっています。
個人年金保険の積立のメリット
老後資金を貯めるには、銀行の定期預金や投資など様々な手段がありますが、特に個人年金保険を活用するメリットは2つあります。
解約返戻率が100%を超えるものがある
個人年金保険の保険商品の中には、支給される年金総額が自分の支払った保険料総額よりも高額になるものがあります。
個人年金保険の積立金は一定の利率を加えて運用されるため、戻ってくる年金額が利率分だけ増えているのです。
銀行の定期預金などで貯蓄をした場合にも、貯めたお金に対して金利が加えられますが、定期預金の金利よりも個人年金保険の金利の方がお得です。
日本銀行金融機構局によると、2019年6月26日時点では定期預金の金利は0.010%~0.020%。
一方の個人年金保険は、たとえば30年積立で返戻率が107%の場合、年金の受け取りを開始するまでの積立期間の運用利率は約0.098%。
30年積立で返戻率107%というのは珍しい利率ではなく、同じくらいの返戻率が設定されている保険商品も販売されています。
また個人年金保険では、年金の受取期間を遅らせると、支給される年金額はさらに増え、積立金に対する利率がさらに良くなります。
これらを踏まえると、個人年金保険は貯蓄の手段としてメリットが大きい方法と言えるでしょう。
生命保険料控除を利用できる
個人年金保険では、その年に支払った保険料の金額に応じて、所得税と住民税を減額できる「生命保険料控除」を利用することができます。
控除額には上限があり、2012年1月1日以降に契約・更新した個人年金保険の場合には、所得税で最大40,000円、住民税で最大28,000円です。
老後資金の積立と同時に、現在の納税額も減らすことができるため、貯金や投資などと比べてお得と言えるでしょう。
保険料を支払っている間は毎年控除を受けることができるため、個人年金保険に加入を考えている方にはぜひ覚えておいていただきたいメリットです。
個人年金保険の積立のデメリット
個人年金保険には、メリットがある一方でデメリットもあります。では、個人年金保険による積立のデメリットとはどのようなものでしょうか? 1つずつ見ていきましょう。
物価上昇や景気変動などに対応しにくい
個人年金保険は、物価上昇や景気変動などに対応しにくいというデメリットがあります。
というのも、一定の保険料を固定利率で積立するため、世間の景気が良くなりどれだけ金利が上昇しても、個人年金保険の利率は変わらないのです。
また、物価が上昇した時には、将来的に受け取る年金が生活水準に対して足りなくなってしまうことも考えられます。
このように、将来的な物価・景気の変動に上手く対応することができないという点をあらかじめ承知した上で、個人年金保険に加入する必要があるでしょう。
途中で解約すると元本割れする
2つ目のデメリットは、個人年金保険を途中で解約した場合には、元本割れをしてしまうという点です。
個人年金保険を途中で解約した際には、今まで払い込んだ積立金が戻ってきますが、全額が戻ってくるわけではありません。そのため、せっかくお金を積み立てたのに、解約することで損をしてしまう可能性があるのです。
このような点を踏まえると、個人年金保険は年金を受け取るまで解約しないことを前提に加入をする必要があります。
もし途中で積立金を引き出したい、積立金を柔軟に使える貯蓄方法が良いという場合には、自分で銀行口座に貯金をするなどがおすすめです。
積立NISAという選択
老後の資金を積み立てるためには、「積立NISA」という選択肢もあります。
積立NISAとは、金融庁が定めた基準を満たす投資信託・ETFに対して毎月決まった額を積み立てる形で投資していくものです。日本に住む20歳以上の方であれば誰でも始めることができ、自分が選んだ金融商品に対して毎月決まった額を投資していきます。
積立NISAのメリットは、積立NISA用の口座管理手数料が無料、また、投資によって生じた利益は最長20年間非課税という点。
通常の投資であれば、生じた利益に対して20%ほどの税金が生じますが、積立NISAの場合にはこの税金がかかりません。積み立てたお金や生じた利益はいつでも引き出すことができるため、個人年金保険とは異なり柔軟に使うことが可能です。
また、投資する金融商品は、金融庁が定めた基準をクリアした限られた商品だけなので、投資初心者でも手が出しやすいという点もメリットです。
積立金は、毎月自分の給与受取口座や生活口座から自動的に引き落とすことができるため、手間もかかりません。
口座管理手数料が無料、投資利益に対して非課税など、余計なコストがかからず手軽に始められるため、積立NISAは長期的な資産形成としておすすめです。
ただし、いかに初心者向けとはいえ、投資であることには変わりないため、利益が出ない、もしくはマイナスになってしまうことがあることには注意が必要です。
堅実にお金を貯められる一方、老後でなければお金が支給されない個人年金保険の積立と、投資利益がどうなるか分からない一方、自分の好きな時にお金を引き出すことができる積立NISAは、どちらが良いと言い切れません。自分の将来のマネープランを考えた上で、どちらが良いのか検討してみて下さい。
個人年金保険の魅力は積立だけじゃない!
主に老後資金の積立に利用される個人年金保険ですが、年金の積立という目的以外に「税金対策」として利用することができます。
先ほどもメリットとして紹介しましたが、個人年金保険は生命保険料控除が適用されるため、保険料を支払っている間は所得税と住民税を減らすことが可能です。
個人年金保険で生命保険料控除を受けるには、下記のような条件を満たして「税制適格特約」を付ける必要あります。
とはいえ、満たさなければいけない条件は複雑なものではないため、特殊な事情がない限りは税制適格特約を付加することができるでしょう。
税制適格特約の条件
- 年金の受取人は、被保険者と同一であること。
- 年金の受取人は、保険料もしくは掛け金の払込みをする者、またはその配偶者となっていること。
- 保険料は、年金を受給するまでに10年以上の期間にわたって定期に支払う契約であること。
- 年金は年金受取人の年齢が原則として満60歳になってから支給されること
- 年金の支給期間は10年以上の定期、または終身であること
また、生命保険料控除が適用される金額には上限があり、もし今から個人年金保険に加入した場合、控除額の上限は下記の通りになります。
所得税(2012年1月1日以降に契約・更新した保険の場合)
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超~40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超~80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
住民税(2012年1月1日以降に契約・更新した保険の場合)
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
12,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
12,000円超~32,000円以下 | 支払保険料等×1/2+6,000円 |
32,000円超~56,000円以下 | 支払保険料等×1/4+14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
控除額の上限の範囲内で毎年税金対策ができるため、個人年金保険は老後資金の積立だけではない魅力があると言えます。ただし、生命保険料控除で税金対策をするには、先ほど説明した税制適格特約が必要になるので、その点だけ忘れずに覚えておくようにしましょう。
個人年金保険の積立は簡単に始められる
個人年金保険は、老後資金の積立の手段として非常に簡単に始めることができます。
しかし、今回紹介した積立NISAなど他の金融商品に対する投資も、老後資金の積立手段として利用することができます。
どのような手段が自分に向いているのかは、現在の経済状態や、将来的なマネープランなどによって異なります。
もし老後資金の積立の方法に迷った時には、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談してみると良いでしょう。
あなたの現在の状況、将来のリスクなどを踏まえた上で、最適な積立方法を教えてくれるはずです。
保険商品のご検討にあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり」「約款」などを必ずご覧ください。
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