退職金を受け取った時には確定申告が必要?手続き方法を解説

今まで勤めてきた会社を退職する際、勤続年数に応じて退職金を受け取るのが一般的ですよね。
退職金については、基本的に確定申告をしなくても良いようになっています。
しかし、中には確定申告をすることで還付金が支払われるケースもあるのです。
ここでは、退職金にかかる税金の種類や、確定申告をした方がお得になるケースについてご紹介。
確定申告書の書き方もまとめているので、条件に当てはまる場合は参考にしてみてくださいね。
退職金の確定申告は基本的に必要ない
退職金を受け取る際は、あらかじめ会社側で源泉徴収が行われていることがほとんどです。
そのため、退職金に対して確定申告をする必要は基本的にありません。
しかし、特定の条件に当てはまる方については、確定申告を行うことで払い過ぎた税金の還付を受けられる可能性も。
まずは、確定申告における退職金の扱いと計算方法を見ていきましょう。
退職金にかかる税金の種類もまとめています。
退職所得とは
退職金は「退職所得」と呼ばれる所得の1つです。
退職する際に一時的に受け取るお金のことを指し、退職金以外にも以下のようなお金が該当します。
- 解雇予告なしで解雇された場合の解雇予告手当
- 国から受け取る未払い賃金
- 社会保障制度から支給される一時金
- 保険会社・信託会社からの退職一時金 など
退職所得は一時的な収入であるため、税負担が大きくならないように控除の制度が設けられています。
控除額の計算方法は2種類あり、勤続年数が20年を超えているかどうかがポイントです。
勤続年数が20年以下の場合
勤続年数が20年以下の場合は、次の計算式で退職所得控除を求めます。
勤続年数×40万円(80万円未満の場合は80万円)
このとき、勤続年数に端数が出るときは切り上げで計算しましょう。
例えば、15年6カ月で退職した場合は以下のようになります。
16年×40万円=640万円
つまり、退職金が640万円以下であれば全額控除となり、税金がかからないということです。
勤続年数が20年を超えている場合
勤続年数が20年を超えている場合は、次の計算式で退職所得控除を求めます。
800万円+(勤続年数-20年)×70万円
このときも、勤続年数に端数が出るときは切り上げで計算しましょう。
例えば、23年8カ月で退職した場合は以下のようになります。
800万円+(24年-20年)×70万円=1,080万円
つまり、退職金が1,080万円以下であれば全額控除となり、税金がかからないということです。
退職金にかかる税金
控除額を超えて退職金を受け取った場合は、退職所得という扱いになり、所得税と住民税がかかります。
所得税
退職所得に対する所得税は「分離課税」という方法で独立して計算を行います。
通常、所得税の計算は累進課税制度に基づいて行われるため、退職所得を合算することで税率が上がってしまう可能性があるからです。
退職所得にかかる所得税は以下の計算式で求めます。
退職所得×税率-退職所得控除額
所得に応じた税率は以下の表を参考にしてみてください。
課税退職所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
住民税
住民税の計算はその他の所得と同様、退職所得に10%をかけた金額となります。
10%のうち、6%が市町村民税(特別区民税)、4%が道府県民税(都民税)です。
還付金を受け取ることができるケース
冒頭でもお伝えしましたが、一般的に退職金は源泉徴収後に支払われるため、確定申告をする必要がありません。
しかし、中には確定申告が必要となるケースや、確定申告をすることでお得になるケースが存在します。
退職金を確定申告した方が良い4つのケースを詳しく見ていきましょう。
「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない
通常、退職する際には、「退職所得の受給に関する申告書」を会社側に提出します。
申告書類には氏名や住所といった基本情報を記入する他、別の会社で受け取っている退職金に対する源泉徴収票の添付も行います。
申告書を提出することにより、会社側は正しい税率で退職金の計算ができるようになるのです。
しかし稀に、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していないケースが起こります。
申告書が提出されないと、その人が別の会社からも退職金を受け取っているのかどうかを会社側で判断することができません。
正しい税率が分からない場合、一律20.42%という非常に高い利率での源泉徴収が行われてしまいます。
この場合は税金の払い過ぎになりますので、確定申告をすることで還付金として一部の税金が戻ってきます。
自分が「退職所得の受給に関する申告書」を提出したかどうか覚えていない場合は、受け取った源泉徴収票の金額を確認してみましょう。
例えば、15年6カ月で退職し、退職金を800万円受け取った場合、通常は以下の計算になります。
退職所得控除額:16年×40万円=640万円
退職所得:(800万円-640万円)÷2=80万円
所得税:80万円×5%=40,000円
このように、本来払うべき税金は40,000円ということになります。
しかし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合、800万円の退職金に対して20.42%の所得税がかかるため、納税額は160万円以上に。
確定申告すれば156万円以上が手元に戻るわけですから、確定申告をしない理由はありませんよね。
退職した同年内に再就職していない
年度途中で退職し、同年内に再就職していないという方は、確定申告によって還付金が戻る可能性が高いです。
特に年のはじめに退職している場合は所得が少ないため、社会保険料控除や生命保険料控除、扶養控除などの各種控除が残っているはずです。
サラリーマンの場合、毎年年末になると会社側で「年末調整」が行われます。
年末調整とは、1月1日~12月31日の1年間における所得税を再計算して調整する制度のことです。
毎月、給与にかかる所得税の源泉徴収が行われていますが、このときには保険料や医療費などの考慮がされていません。
しかし実際にはそれらの費用を支払っており、源泉徴収で計算された所得よりも少なくなっていますよね。
そのため、年末に一括で費用を清算し、正しい所得額を再計算する必要があるのです。
結果として、各月で源泉徴収された税額と、本来の所得税額には差額が生じます。
この差額が還付金という形で払い戻されるのが年末調整の仕組みです。
ところが、年度途中で退職した場合は年末調整が行われないので、源泉徴収された税金はそのままになってしまいます。
自分で確定申告を行わないと、払い過ぎた税金が戻ってこないということです。
年末調整を行っていない方については、どちらにしても受け取った給与に対して確定申告をする必要があります。
このときに退職金の確定申告も一緒に行うことをおすすめします。
再就職したが収入が大きく減少した
再就職しなかった場合と同様、年間の収入が少なくなったことで控除がしきれない場合は確定申告をした方が良いでしょう。
また正社員としての再就職ではなく、アルバイトやパートという形で転職している場合も同じです。
ただし、転職先で前職分も含めた年末調整を行ってくれる場合は確定申告をしなくても問題ありません。
転職先で年末調整をする場合は、前職の源泉徴収票を提出できるようにしておきましょう。
副業で赤字がある
近年は会社員と並行して副業を行っている方も少なくありません。
ネット事業や不動産、投資などの副業における所得が赤字になっている場合、確定申告の際に退職所得と相殺できる可能性があります。
不動産所得などに対する赤字は「損益通算」という制度を利用することで別の所得から引くことができるのです。
ただし損益通算で相殺する所得は順序が決まっているため、必ずしも退職所得から引くことができるわけではありません。
複雑な仕組みですので、税理士などの専門家に相談しながら確定申告を進めると良いでしょう。
退職金を確定申告する際の手続き方法
毎年、確定申告を行う期間は2月16日~3月15日と決まっています。
年のはじめに退職している場合は、翌年の確定申告まで長い期間が空くため、ついつい確定申告を忘れがち。
しかし確定申告によって大きな還付を受けられる可能性もあるので、きちんと行うことをおすすめします。
確定申告に必要なもの
退職金の確定申告を行うために必要なものは以下の通りです。
- 確定申告書
- 源泉徴収票
- 支払調書(副業がある場合)
- 印鑑・通帳
確定申告書
確定申告書は国税庁のWEBサイトから印刷することができます。
税務署の窓口で直接用紙を受け取ることもできますし、e-taxを利用するという方法もあります。
会計ソフトを利用している方であれば、入力後に印刷するだけで完了です。
源泉徴収票
源泉徴収票は年末調整後に勤め先の会社から受け取ることができます。
年度途中で退職している方は、その時点までの源泉徴収票を発行してもらうよう会社に連絡しましょう。
支払調書(副業がある場合)
支払調書は必ずしも準備する書類ではありません。
所得税法に規定されている報酬額が一定額を上回っている場合に提出が必要となります。
印鑑・通帳
確定申告書類には、還付金を受け取る際の口座情報を記入する部分があります。
口座番号などが分かる通帳(またはカード)と、認印(シャチハタは不可)を用意しておきましょう。
確定申告書の書き方
確定申告書には、「A様式」と「B様式」があります。
それぞれの対象者と記入方法は以下の通りです。
A様式の確定申告書は、給与所得や公的年金、雑所得のみの方が利用するものです。
会社員やアルバイト・パートの方はA様式の確定申告書を使うことが多いです。
退職金の確定申告だけであれば、こちらを利用する方が分かりやすいのでおすすめ。
B様式の確定申告書は、所得の制限がなく、誰でも利用できる内容となっています。
年間15万円を超える副収入がある方や個人事業主の方はB様式を使うようにしましょう。
どちらの場合でも、源泉徴収票に記載された以下の情報が必要です。
- 支払金額
- 源泉徴収税額
- 社会保険料等の金額
- 所得金額 など
また確定申告書第一表にある「給与」欄に記入する金額は、収入に応じて計算方法が異なります。
給与の計算をする際は以下の表を参考にしてみてください。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額の計算方法 |
---|---|
1,800,000円以下 | 収入金額×40% ※650,000円に満たない場合は、650,000円 |
1,800,000円超 3,600,000円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
3,600,000円超 6,600,000円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
6,600,000円超 10,000,000円以下 | 収入金額×10%+1,200,000円 |
10,000,000円超 | 2,200,000円(上限) |
退職金の確定申告は5年間まで遡ることができる
退職金の確定申告を忘れてしまったという方でも安心してください。
退職金に対する還付金の届け出は過去5年間まで遡ることが可能となっています。
過去に受け取った退職金を確定申告していない方は、この機会に申告を行うようにしましょう。
不明点については税務署の窓口などで相談にのってもらうことができます。
まとめ
- 原則的には退職金を確定申告する必要はない
- 退職金の受け取り方やタイミングによっては確定申告をした方がお得
- 確定申告をする場合は退職した会社の源泉徴収票が必要
確定申告や税金の仕組みは複雑で、なかなか手を付けられないという方も多いかもしれません。
しかし、本来払わなくて良い税金を納めたままでいるのはもったいないです。
この機会に過去の退職金までを見直し、払い過ぎた税金を還付してもらえるように申請手続きを行ってみてくださいね。
保険商品のご検討にあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり」「約款」などを必ずご覧ください。
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