受給時にかかる個人年金保険の税金と対策方法について解説

年金と聞くと、なんとなくそのまま手元に入ってくるイメージがありますが、「所得」という扱いになり税金が発生するケースがあるのです。
今回は、個人年金保険の年金受給の税金に注目し、所得税・贈与税がかかるケースと税額の計算方法について細かく解説していきます。
などということにならないように、このページを参考に税金について確認していきましょう!
目次
個人年金は受け取り時に税金がかかります
老後資金の貯蓄として活用される個人年金保険は、国民年金や厚生年金などの国の公的年金とは異なり、保険会社が取り扱っている私的な年金です。
仕組みとしては、保険料を一定期間積み立て、契約時に設定した年齢になると積み立てた原資から年金を受け取れるようになるというものです。
実は、個人年金保険で支給される年金は、保険契約者と年金受取人の関係に応じて、所得税や贈与税などの所定の税金が課せられるのです。
では、個人年金保険の年金を受け取る際には、どのような税金が課せられるのでしょうか?
1つずつみていきましょう。
個人年金保険の税金その1:雑所得
まず、個人年金を受け取った時には、「雑所得」という所得税が課税されます。
個人年金保険の年金の受け取りは
- 毎年年金の形で受け取る方法
- 一括受取でまとめて受け取る方法
年金の形で受け取る場合には「雑所得」となりますが、一括受取の場合は「一時所得」という扱いになるのです。
さて、雑所得が課税される場合ですが、たとえば保険契約者が夫、年金受取人も夫など、同一人物の場合に雑所得が課税されます。
ただし、所得税の対象となる金額は、受け取る年金額全額ではありません。
雑所得は、受け取る年金額から、それまでに払い込んだ保険料などの「必要経費」を差し引いた金額が所得税を課税する対象となるのです。
さらに、所得税には下記のような一定の控除があるため、所得金額によっては税金がかからないこともあります。
所得の所得控除
給与所得がある場合
- もし個人年金を受け取っている間に定年後雇用などで給与を取得していた場合には、所得金額が20万円以下であれば所得税は課税されません。
給与所得がない場合
- もし個人年金を受け取っている間に給与所得がない場合には、所得金額が38万円以下であれば所得税は課税されません。
このように、雑所得の所得金額が20万円、もしくは38万円以下の場合には、所得控除が適用されるため税金が課されないのです。
では、肝心の「雑所得の所得金額」の求め方を見ていきましょう。
雑所得の所得金額の求め方
雑所得の所得金額を求めるには、個人年金保険の「総収入額」から「必要経費」を引いた額を算出する必要があります。
必要経費=1年間の年金額 × 払込保険料合計額/年金受取合計額
たとえば、「年金額は1年あたり60万円、受給期間は10年間。振込保険料の総額は550万円」という条件の場合でシミュレーションをしてみましょう。
雑所得の所得金額=60万-55万円=5万円
よって、上記条件の場合、雑所得の所得額は5万円になります。
雑所得の控除金額である20万円以下、そして38万円以下なので、所得税は課税されません。
このように、個人年金保険の年金を毎年受け取った場合には、受給する年金額から必要経費を差し引いた金額が課税対象となります。
所得控除もあるため、所得税がかからないという方も多いでしょう。
個人年金保険の税金2:一時所得
一時所得の場合も、雑所得と同様に年金全額に対して課税されるのではなく、必要経費と控除額を差し引いた金額に対して課税されます。
ただし、一時所得の必要経費は雑所得の場合とは異なり、今までに払い込んだ保険料の全額が必要経費とされます。
雑所得の所得金額の求め方
一時所得の所得金額は、年金の一括受取金額から、受給するまでに支払った払込保険料の総額、そして特別控除額の50万円を差し引くことで算出できます。
たとえば、「年金の一括受取額が580万円で、振込保険料の総額が550万円」という条件でシミュレーションしてみましょう。
一時所得の所得金額=(580万円-550万円-50万円)×1/2=-10万円
このシミュレーションでは、所得金額が0円以下のため、一時所得に課せられる所得税はありません。
一時所得の場合も、20万円以下もしくは38万円以下の場合には所得税が課されない控除が適用されます。
年金の一括受取をする際には、必要経費と特別控除の差し引きがあるため、所得税の控除金額の範囲内におさまることが多いでしょう。
このように、個人年金保険の受給額を年金の形で受給しても一括で受給しても、払い込んだ保険料が所得金額から差し引かれ、さらに一定の控除も適用されることから、雑所得・一時所得に税金が課されるケースはあまり多くありません。
ただし、個人年金保険の他に雑所得として扱われる収入があったり、生命保険の解約返戻金を受給していたりした場合には、一時所得や雑所得の金額が増え、課税の対象となることがあるので、注意が必要です。
個人年金保険の税金3:贈与税
次に、個人年金保険の贈与税について説明していきます。
これは、年金を受け取る権利を、加入者から年金受取人に対して贈与しているとみなされるためです。
贈与税で注意が必要なのは、税金の金額が雑所得・一時所得と比べて非常に高額になってしまう点です。
では、個人年金保険の贈与税の場合にはいったいどれだけの税金が課されるのか、シミュレーションしてみましょう。
贈与税の課税対象金額の求め方
個人年金保険の贈与税の対象金額は、年金受給評価額から基礎控除110万円を差し引くことで求められます。
年金受給評価額とは、
①個人年金保険の解約返戻金の額
②年金を一括受給する時の金額
③予定利率等
上記3つをもとに計算した金額の3つの中から、最も大きい金額になるものを指します。
たとえば、年金受給評価額が500万円とされた個人年金保険の場合には、
贈与税の対象金額=500万-110万(基礎控除)=390万円
390万円が贈与税の課税対象額となります。
この課税対象額に、贈与税の税率をかけることで贈与税の税額が算出されます。
贈与税の税率は課税対象額によって異なり、具体的には下記の表の通りです。
基礎控除後の課税対象額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
今回のシミュレーションの場合、課税対象額が390万円なので、税率は20%、控除額は25万円です。よって、
390万×20%-25万円=53万円
評価額が500万円の個人年金保険を受け取った場合、贈与税は53万円も課されるということになります。
この点を踏まえると、個人年金保険は加入者と年金受取人を同一人物にして、雑所得もしくは一時所得として年金を受け取った方が税制上でははるかにお得ということが分かります。
以上のことから、特別な事情が無い限り、個人年金保険は加入者と年金受取人を同じにすることをおすすめします。
せっかく老後の資金として活用するために個人年金保険に加入するのですから、自分の手元に残るお金はできる限り多い方が良いでしょう。
中途解約時の解約返戻金も要注意!
個人年金保険は、途中で解約をした時には解約返戻金が支給されます。
解約返戻金に課される税金は、年金と同様に保険契約者と年金受取人の関係性によって種類が分かれます。
保険契約者と受取人が同一の場合には所得税(一時所得)、同一でない場合には贈与税です。
税金の金額を求める式も、年金の受取時とほとんど変わりません。
一時所得の所得金額={解約返戻金の総額-払込保険料総額-50万円(特別控除)}×1/2
贈与税の対象金額=年金受給権の評価額-110万円(基礎控除)
解約返戻金を一時所得として受け取る場合には、解約返戻金から払込保険料が差し引かれて所得金額が求められるため、課せられる税金はないケースがほとんどです。
一方、贈与税の場合には基礎控除のみしか差し引かれないため、評価額が大きければ大きいほど税金は高額になってしまいます。
途中解約・受取人の途中変更時の税金
個人年金保険を途中解約した場合の税金
個人年金保険を途中解約した場合、それまでに払い込んだ保険料が解約返戻金として支払われます。
この解約返戻金は一時所得として扱われ課税されます。
一時所得の仕組みについては、年金を一括受取で受給した場合の税金について、すでにお伝えしたとおりです。
個人年金保険の解約返戻金は、解約時期にもよりますが、払い込んだ保険料の総額よりも少なくなる場合もあり、実際に課税が生じるケースは多くはないでしょう。
受取人を途中で変更した場合の税金
たとえば、夫が契約していた個人年金保険について、受取人を妻に変更したとしましょう。
妻が年金受取年齢に達した時点で、妻は夫から年金受給権を贈与されたと考え、贈与税が課税されます。
このとき、名義変更後に、保険料の負担者が変わっている場合(名義変更後は妻が自分で支払うようになったなど)はそれも加味して考えます。
夫からの贈与として贈与税が課されるのは、夫が保険料を負担した分であるべきだからです。
この「夫から贈与された年金受給権の価値」に応じた贈与税が課されます。
「年金受給権の価額」とは、その後に受け取れる年金総額や、一括で受け取った場合の金額などから求められます。細かく言うと、
- 解約返戻金の額
- 一括で受け取った場合の額
- 今後受け取れる年金の総額(終身年金は平均余命をもとに算出)を現在の価値に直したもの
のうち、いずれか多い金額になります。
なお、保険料払込期間中や据置期間中に契約者が亡くなった場合は、死亡給付金が支払われます。
この死亡給付金に対しては、受け取った人に相続税が課税されます。
このときも、途中の名義変更などで契約者が保険料のすべてを支払っていない場合は、契約者が保険料を支払った割合に応じて、相続税の対象となる額が決まります。
個人年金保険は契約者と受取人を同一にして税金対策
今回説明してきた通り、個人年金保険は、年金を受給した際に税金が課せられます。
保険の契約者と年金受取人が同一の場合は、必要経費や基礎控除によって税金の金額が小さく抑えられますが、契約者と年金受取人が異なる場合には高額な贈与税が発生することを必ず覚えておきましょう。
もし個人年金保険にかかる税金に関して不安がある場合には、年金を受け取り始める前にファイナンシャルプランナー(FP)に相談することをおすすめします。
皆さんが加入している他の生命保険や医療保険などと合わせて、支払わなければいけない税金の金額を教えてくれるはずです。
保険に関わる税金の仕組みは複雑で、税金が発生した場合には確定申告をして納税する必要もあります。不安な場合には、しっかりとアドバイスを受けるようにしましょう。
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