介護保険とは?介護にはどのくらいの総額で費用がかかる?

高齢化が進み、人生100年時代へと突入しようとしている現代において、介護は身近な存在。ますます高齢化社会に拍車がかかっていくことが見込まれるなか、親の介護や自身の将来に対して不安を募らせている人もいるのではないでしょうか。今回は介護に必要なお金に焦点をあててご紹介します。「介護の費用ってどれぐらいかかるもの?」、「介護保険ってどんなもの?」などといった気になる疑問について紐解いていきましょう。
目次
介護方法によって変わる介護費用の平均
介護する側とされる側、いずれにおいても気がかりになることのひとつとして挙げられるのが費用面ではないでしょうか。
要介護認定を受けた40歳以上の人は介護保険を利用することが基本的には可能であり、自己負担額は介護保険サービス利用料のうちの1割とされています。
また、対象となる介護保険サービス以外のものは全額自己負担しなければならないのも特徴のひとつです。
しかし、介護の期間は予想できないことから、どれぐらいの資金を準備しておくと安心なのか目途をつけるのが難しいといった声も少なくありません。
介護には在宅介護をはじめ、有料老人ホームなどを使用する施設サービスなどさまざまな方法がありその方法によって費用も異なりますが、ここではその方法ごとに必要となる平均的な費用について確認していきましょう。
在宅介護の場合
在宅で介護する場合の費用には、デイサービスや訪問ヘルパーの利用など介護保険によるサービスの利用費と、おむつ代や医療費といった介護サービス以外の費用の2種類が挙げられます。
公益財団法人 家計経済研究所が2016年に実施した「在宅介護のお金と負担」を見てみると、1ヶ月あたりの介護サービスの費用は平均3.7万円。
一方、介護サービス以外の費用は、月額平均3.2万円であり、介護サービス費用+介護サービス以外の費用を合わせた在宅介護の1ヶ月平均支出額は6.9万円と算出することができます。
有料施設を利用した場合<有料老人ホーム>
有料老人ホームとは、生活に必要な食事や介護、家事、健康管理などのうちいずれかのサービスを提供している施設のことを言います。
主に「介護付き」・「住宅型」・「健康型」の3つのタイプがあり、入居金不要のところから、なかには数百万円や数千万円以上必要というところまでさまざま。
また、月額の利用料金も15~35万円と施設によって設定に差があるのが特徴です。
厚生労働省が発表している平成26年の「サービス付き高齢者向け住宅等の月額利用料金」によると、有料老人ホームの月額平均は約18.9万円と示されています。
有料施設を利用した場合<特別養護老人ホーム>
特別養護老人ホームは、入居一時金が不要のところが多く、民間が運営している有料老人ホームに比べ費用が比較的リーズナブルです。
また、原則要介護3以上の人でないと利用できない点も特徴のひとつと言えます。
月額利用料は利用する部屋のタイプによって異なりますが、厚生労働省の「介護療養型医療施設及び介護医療院」の情報によると、食費の月額平均約4.2万円。
居住費はそれぞれのタイプを合算して計算すると約3.9万円で、施設利用料=食費+居住費で8.1万円となります。
またここに介護保険の自己負担額1割~3割もプラスされることも考慮しておく必要があります。
有料施設を利用した場合<サービス付き高齢者住宅>
主に民間事業者が運営していることが多いサービス付き高齢者住宅。
バリアフリー対応の賃貸住宅で介護認定のない人または軽度の要介護者を受け入れているのが特徴です。
厚生労働省の「サービス付き高齢者向け住宅等の月額利用料金」を見てみると、サービス付き高齢者住宅の月額平均利用料は、約14.0万円となっています。
これらの金額を見てみても、介護にかかる月額費用は決して安いものではないということが分かるでしょう。
介護費用として医療費も考慮した場合の総額
厚生労働省の「患者調査」によると、受療率は年齢とともに上がっていき、60~64歳の年齢の人を見てみると、10万人の人口に対して7,000以上にものぼる人が入院または外来の受療を受けていることが分かります。
また、同調査では、65歳以上における一人当たりの医療費の年間総額平均は70万円程度とも示されています。
もちろん、なかにはいたって健康という人もいるため、医療費には個人差があるでしょう。しかし、これ以上支払っている人がいるのも事実です。
しかしみなさんもご存知の通り、健康保険や国民健康保険、後期高齢者医療制度という医療費制度がありますよね。
対象者 | 本人負担額 | |
---|---|---|
健康保険 国民健康保険 | 64歳未満の人 | 3割 |
後期高齢者 医療制度 | 65~74歳の人 | 1割 |
日本はこうした医療費制度が整えられているため、それほど大きな負担にはならないようになっていますが、これらの制度ではカバーしきれない部分があることにも注意しておかなければなりません。
例えば、患者希望の差額ベッド代や先進医療費などは医療保険の対象外です。
護保険の費用を想定する場合には、医療費についても考慮しておく必要があるでしょう。
介護保険制度とは?高額療養費・介護サービス費・合算療養費制度について
介護保険制度とは、加齢に伴い体の機能が衰えて日常生活に支障が生じた人に対して、介護サービスを提供する社会保険制度のこと。
この制度は市区町村など身近な自治体が保険者となって運営し、申請の受付から認定まで担います。
サービスを受けるためには、原則1割を自己負担しなければなりません(ただし、年収が280万円以上の場合においては、自己負担率は2割もしくは3割になります)。
被保険者は65歳以上の第1号被保険者と、40~64歳までの第2号被保険者に分けられます。受給要件や保険料の徴収方法は以下の通り。
65歳 以上の方 (第1号被保険者) | 40歳から 64歳の方 (第2号被保険者) | |
---|---|---|
対象者 | 65歳以上の方 | 40歳以上65歳未満の健保組合、全国健康保険協会、市町村国保などの医療保険加入者 |
受給要件 | ・要介護状態 ・要支援状態 | 要介護(要支援)状態が、老化に起因する疾病(特定疾病)による場合のみに限定 |
保険料の徴収方法 | ・市町村と特別区が徴収(原則年金からの天引き) ・65歳になった月から徴収回収 | ・医療保険料と一体的に徴収 ・40歳になった月から徴収開始 |
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/2gou_leaflet.pdf
サービスを受けられる対象者は、原則65歳以上の第一号被保険者のみです。
しかし、第二号被保険者は、特定疾病によって介護が必要と認められた場合においては例外となり、状態に応じたサービスを受けることが可能です。
介護保険で受けることができるサービス内容は大きく分けると5つあります。
- 支援サービス(ケアプラン作成や家族の相談対応など)
- 自宅に居住する人向けのサービス(訪問介護、デイケアなど)
- 施設サービス(特養、老健な)
- 介護用具に関するサービス(車いす、介護ベッドなど)
- 介護リフォーム(手すり、バリアフリーなど
また、介護保険は介護度に応じて支給限度額があります。
介護度 | 給付 限度額 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
---|---|---|---|---|
要支援1 | 50,030円 | 5,003円 | 10,006円 | 15,009円 |
要支援2 | 104,730円 | 10,473円 | 20,946円 | 31,419円 |
要介護1 | 166,920円 | 16,692円 | 33,384円 | 50,076円 |
要介護2 | 196,160円 | 19,616円 | 39,232円 | 58,848円 |
要介護3 | 269,310円 | 26,931円 | 53,862円 | 80,793円 |
要介護4 | 308,060円 | 30,806円 | 61,612円 | 92,418円 |
要介護5 | 360,650円 | 36,065円 | 72,130円 | 108,195円 |
介護度が高くなるほど、必要な介護も増えて費用も高額となっていくことが分かります。収入が年金のみの場合、これらの費用の捻出が大きな負担となってしまう家庭も少なくないでしょう。しかし、以下の制度を利用すれば、家計の負担を減らすことができるかもしれません。
高額療養・高額介護合算療養費制度
後期高齢者医療制度や国保などを使っていて且つ介護保険者がいる世帯で、世帯単位で介護保険と医療保険の自己負担額の合算したものが「自己負担限度額」を超過した場合において、超えた分の金額を支給してもらえる制度のこと。限度額は原則年額56万円となっていますが、世帯の所得によっても異なります。
高齢介護サービス費
高齢介護サービス費とは、介護保険を利用して1~3割の自己負担額を支払った場合において、その月の合計金額が一定基準を超えたときに超過分が払い戻される制度のことです。これは各市区町村が実施するものであり、上限は世帯の所得によって異なります。上限額は以下のように設定されています。
- 生活保護をしている人の場合:自己負担上限額15,000円(個人)
- 世帯全員が市区町村民税の課税対象外である世帯:自己上限負担額24,600円(世帯)
- 世帯のなかに市区町村民の課税対象者がいる場合:自己負担上限額44,000円(世帯)
- 現役並みの所得を有している人が世帯にいる場合:自己負担上限額44,000円(世帯)
公的介護保険と民間介護保険の違い
公的介護保険は、住んでいる市区町村から介護のサービスを受けられるものであり、40歳以上の人は自動的に加入することとなります。
上述した介護保険は、この公的介護保険にあたります。生活保護受給者や医療保険料の支払いが困難である人は加入することが原則できません。
しかし、65歳以上になるとその制限はなくされ、全員が被保険者として扱われるようになります。
またこの公的介護保険は、各市町村に申請をして要介護認定を受けなければ、利用は認められません。
一方で民間の介護保険は、公的介護保険のように高齢の人のみを対象としたものだけではありません。
公的介護保険のような介護度に応じて加入できるタイプのほかに、保険会社の規定にそぐえば、高齢でなくても加入できるタイプも存在し、任意で加入できるのが特徴です。
保障は事前の契約内容に応じた現金が支給される仕組みとなっていて、まとまった金額を受け取れる「一時金保障」と、定期的に受け取れる「年金保障」を選択することができます。
また、死亡保障を備えているタイプのものと、死亡保障のない掛け捨てタイプのものもあり、民間介護保険は公的介護保険とは違って、自身で保障内容を選択できるのが魅力と言えるでしょう。
冒頭でも触れたように、現代は人生100年時代とも言われているほど長寿化が進んでいます。
なかには、介護状態のまま長生きするケースも少なくありません。
公的介護保険だけでは将来が不安という人は、公的介護保険とは別で民間介護保険に加入して、不足分に対して備えておくのも選択肢に入れておくと良いようです。
介護のリスクに備えるために民間介護保険はおすすめ
生命保険文化センターの調査によれば、介護経験者の介護期間は平均して54.5ヶ月(4年7ヶ月)であり、介護に要した総額費用は公的な介護保険サービスの自己負担分を含めて月々7.8万円と示されています。
介護期間や費用には個人差があるため、一概には言えませんがこちらをもとにして考えてみると、
7.8万円(月額)×54.5ヶ月=約425万円
であり、ここに在宅介護の場合であれば車いすやベッドなどの費用が、有料施設を利用する場合では入居費がさらに加算されることとなります。
そしていつ始まるのか分からないのも介護の特徴です。そのため、「〇年後までに〇円確保したい」と具体的に決めにくいのが難点に挙げられます。そんな場合の対策においても、民間介護保険は有効な方法です。
生活文化センターの調査を見てみると、民間介護保険の加入率は年々増加傾向にあり、公的制度に加えて備えておきたいと考えている人は多くいることが分かります。
早いうちからコツコツと貯蓄していくことで、手厚い介護サービスを受けることが可能となるでしょう。
しかし、民間の介護保険と言っても、保障内容や加入条件は異なります。加入を検討する際のポイントについてご紹介しましょう。
保障期間
保障期間は、一定の期間のみ保障される「有期」タイプのもと、一生涯保障が続く「終身」タイプがあります。
ちなみに有期タイプは80歳までを対象としているものが多いようです。そのため、介護が必要となる可能性が高くなる80歳以降もカバーできる終身タイプを選ぶとよいでしょう。
支払期間
終身タイプでは、一定の期間までに払い込みを終える「短期払い」と、一生涯払い続ける「終身払い」がありますが、終身払いは収入がなくなってからの払い込みが負担になる可能性があります。
そのため、収入があるうちに支払い終えておきたい場合は短期払いを選ぶとよいでしょう。
要介護の度数
民間の介護保険では、要介護2となった場合に保険金が支払われるものと、要介護3以上でないと保険金が下りないものとがあります。
しかし、近年では介護認定も厳しくなっています。このことから、要介護3以上でないと保険金が下りないタイプものは、恩恵を受けられる可能性が狭まってしまうと言えるかもしれません。
加入を検討する場合は、要介護度数いくらで支払い対象となるのかも確認しておくようにしましょう。
まとめ:介護費用は早いうちから計画性を持って準備しよう
介護が必要となるかもしれない可能性は誰しもが抱えています。
介護に対する悩みにはさまざまなものが挙げられますが、早くから備えておくことで、費用面の不安は軽減することができるかもしれません。
まずはここで紹介したように公的介護制度でどこまでカバー可能なのかを知ることが大切です。
また、それでも将来に対して不安に感じるのであれば、民間の介護保険を検討してみるのもよいでしょう。
民間介護保険は、保障内容や加入条件など商品によって特徴が異なるため、プロに相談したりネットの情報を活用したりしながら、しっかり吟味するようにしてください。
保険商品のご検討にあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり」「約款」などを必ずご覧ください。
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