これを読めば納得。給与から引かれる税金や保険料などの中身や計算方法

自分の給料からどれくらいの税金や保険料が引かれているか、その額がどのように決まっているかをご存知でしょうか?特に会社勤めの人だと、細かな額まではあまり把握できていないもの。
税金や保険料について適切な額がきちんと引かれているか確認するためには、その計算方法を知っておくことも大切です。
毎月なんとなくの手取り額しかチェックしていなかった方も、この機会に今一度給与明細にしっかりと目を通してみましょう。
目次
手取りはいくら?給与明細の見方と所得から引かれる税金・保険料の種類
毎月手にする給与明細、手取り額だけ確認しておしまい、という方も多いのではないでしょうか。
実際に手にする給与は、税金や保険料などさまざまな控除がなされたあとのもの。それぞれにどのような種類があるかも確認しておきましょう。
給与明細の見方
毎月給料日になると、書面で手渡される給与明細。近年はネットで閲覧できるという会社も増えてきています。
給与明細を見れば支払われる給与のほか、会社を通してどれくらいの税金や保険料が納められているかを確認することができます。記載されている主な項目は支給、控除、勤怠の3つ。それぞれ以下の点に注意して見てみましょう。
支給欄
支給欄には、会社から支給される基本給や各種手当などの金額が記されています。
まずは、基本給が雇用契約通り支払われているか確認しましょう。また、賞与は基本給○カ月分と計算されるケースが多く、賞与の大まかな額を知る上でも基本給の額を知っておくことは大切です。
次に見ておきたいのが、残業代や休日手当、資格手当などがきちんと支給されているかどうか。雇用契約通りに支払われていない場合は、経理担当に相談する必要があるかもしれません。
控除欄
控除欄には、会社を通して納付された税金や社会保険料の合計が記載されています。
まずは各税金が正しく引かれているかの確認を。詳しい計算方法は後述しますが、所得金額や控除額をもとに自身で税金の額を計算することができます。
また、住民税は給与から天引きとなる特別徴収のほか、自身で納付する普通徴収があります。普通徴収で納めている方は、会社からも重複して引かれていないか見ておきましょう。
勤怠欄
勤務欄には、出勤日数をはじめとした1カ月の勤務実績が記されています。実際の勤務時間や出勤日数と大きく異なる場合は、上司や担当者に確認をとってみてください。
所得から引かれる税金
給料の一部、課税対象額となる部分には税金がかかり、会社員の場合給与から天引きというかたちで納付されます。この税金には、所得税と住民税の2つがあります。
所得税
所得税は、所得の額に応じた金額を源泉徴収にて納付します。会社員の場合、毎月の給料をもとに大体の金額を会社が計算して徴収するため、納め過ぎた税金額は年末調整にて還付されます。
住民税
住民税は、1月1日時点で住民票がある自治体に納付する税金です。住民税の額は前年の所得額をもとに計算され、会社員の場合、所得税と同様に給与から天引きされます。
所得から引かれる保険料
給与明細上では、税金に加え「社会保険料総額」という名目でそれなりの金額が天引きされています。社会保険料を構成する具体的な項目について、ひとつずつ見ていきましょう。
健康保険料
会社員や事業者が加入する公的医療保険が、健康保険です。ケガや病気により医療機関を受診した際、医療費の自己負担が軽減されます。運営の違いにより、組合健保、協会けんぽ、各種共済組合などに分けられ、その保険料も加入する団体や居住地によって差があります。
厚生年金保険料
厚生年金とは会社員・公務員が加入する年金制度です。国民年金の上乗せ部分にあたり、定年退職後の公的年金として収入源となるほか、障害年金、遺族年金として受給されることもあります。
収入によらず一定金額を納める国民年金と異なり、所得額によって保険料も異なります。
介護保険料
介護保険とは、加齢にともなって日常生活で介護が必要となった場合に、適切な保健医療サービス、福祉サービスを受けることができる保険です。40歳以上になると、介護保険料も給料から天引きされるようになります。
雇用保険料
雇用保険とは、失業保険を受け取ったりハローワークの支援を受けたりするなど、失業時の生活を保障する保険です。ほかの社会保険料と比較すると額は少なく、1,000円前後引かれていることが多いようです。
所得税の計算方法
所得税は、1年間の所得に対してかかる税金です。日本では累進課税方式を採用しているため、所得が多いほど税率が高くなります。本来は自身で税務署に納めるものですが、会社員の方は“源泉徴収”という形で毎月の給料から天引きされるケースが一般的です。
そのため、具体的な計算方法を知らないという方も多いというのも事実。決して低くはない税金額なので、どのようにして求められているのか知っておきましょう。
所得税金額は、次の計算式で求めることができます。
所得税=(所得金額①-所得控除額②)×税率③-税額控除額④
それほど複雑な計算式ではありませんが、自身の収入だけでなくさまざまな控除も考慮しながら計算しなければならないので、ややこしく感じることは否めません。ひとつずつ順番にみていきましょう。
所得金額
所得金額は単純な収入金額ではなく、そこから必要経費を差し引いた分となります。
会社員の場合、必要経費とみなして給与所得控除が適用されるため、収入金額から給与所得控除を引いた分を所得金額として計算することが可能です。この給与所得控除額は、給与収入の額に応じて以下のように定められています。
A表《給与所得控除額の計算方法》※2019年度現在
給与収入金額(源泉徴収票の支払額) | 給与所得控除額 |
---|---|
~162.5万円 | 65万円 |
162.5万円~180万円 | 給与収入×40% |
180万円~360万円 | 給与収入×30%+18万円 |
360万円~660万円 | 給与収入×20%+54万円 |
660万円~1000万円 | 給与収入×10%+120万円 |
1000万円~ | 220万円 |
所得控除額
ある要件にあてはまれば、所得の合計金額から一定の金額の控除を受けることができます。この制度を所得控除といい、基礎控除や社会保険料控除、配偶者控除など全14種類。いくつかの代表的な所得控除だけでも押さえておきましょう。
基礎控除
所得があれば誰でも一律38万円の控除を受けることができます。
社会保険料控除
会社員であれば一般的に社会保険に加入しているため、社会保険料控除も適用されます。控除額は、標準報酬月額×健康保険料で計算することができます。
配偶者控除
本人の年収が1,000万円以下かつ配偶者の年収が103万円以下の場合、配偶者控除が適用されます。年収900万円以下、配偶者の年齢が70歳未満であれば、38万円の控除が受けられます。
医療費控除
本人や家族のために支払った治療費や薬代が控除されるのが、医療費控除です。年間10万円を超える医療費の自己負担があった場合、医療費控除を受けられる可能性が高いため、医療機関の明細などはしっかりと保管しておきましょう。
税率
所得金額から所得控除額を引いたものを課税所得といい、所得税の税率は個人の課税所得によって決まります。なお、課税所得金額は、1,000円未満の端数は切り捨てて計算してください。
B表《課税所得ごとの所得税率および控除額》
課税所得 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
~195万円 | 5% | 0円 |
195万円~330万円 | 10% | 97,500円 |
330万円~695万円 | 20% | 42万7,500円 |
695万円~900万円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,800万円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~4,000万円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円~ | 45% | 479万6,000円 |
ほとんどの場合、ここまでで所得税の税金額を計算することができます。例として、年収500万円、配偶者(専業主婦)ありの場合の所得税金額を計算してみましょう。
給与所得控除額は、A表をもとに計算し、500万円×20%+54万円=154万円。所得金額は500万円-154万円=346万円となります。
所得控除額は、基礎控除の38万円、社会保険料控除の約60万円(保険料の計算方法については後述します)、配偶者控除38万円を合わせて、約136万円。従って、346万円-136万円=210万円が課税所得金額となります。
B表をもとに税率および控除額を計算すると、210万円×10%-97,500円=112,500円が所得税金額として求められます。
税額控除額
所得控除と税額控除について、違いがよくわからないと感じる方もいるかもしれません。所得の合計額から差し引かれる所得控除に対し、税額控除は所得税金額から決まった金額を控除することができます。
最終的に計算した所得税金額から直接控除されるため適用されると大きな節税となる一方、配当控除や外国税額控除、公益社団法人等寄付金特別控除など、該当するケースはそれほど多くはありません。
住民税の計算方法
住民税とは、1月1日時点の住所地に納める税金のことです。前年の所得をもとに計算される所得割と、定額の均等割を合算して納付します。
住民税=所得割+均等割
所得割の計算方法
住民税の大部分を占めるのが所得割です。前年の1月から12月までの1年間の所得金額をもとに算出します。課税所得金額に税率を掛け、そこから税額控除額を差し引いて計算することができます。
所得割額=(所得金額-所得控除額)×税率-税額控除額
所得税金額を計算した際と同様に、所得金額、所得控除額を求めます。注意したいのが、基礎控除の額です。所得税に関しては一律38万円だった基礎控除額は、住民税の場合33万円となります。
一部の市町村で例外はありますが、ほとんどの自治体において税率は市町村民税6%、道府県民税4%と定められています。合わせて税率10%とすると計算しやすいでしょう。
年収500万円、配偶者(専業主婦)ありの方の所得割額を計算してみましょう。所得金額の346万円から基礎控除の33万円、社会保険料控除の約60万円、配偶者控除の38万円、を差し引き、課税所得金額は346万円-(33万円+60万円+38万円)=215万円。
ここに税率10%を掛け21.5万円が所得割額として求められます。税額控除がある場合は、ここから差し引きます。
均等割
所得に応じて額が変わる所得割と異なり、均等割はすべての住民に一定の税額が定められています。
均等割の標準税率は、市町村民税・特別区民税で3,500円、都道府県民税で1,500円。合わせて5,000円を納付することとなります。市町村、都道府県によっては例外となる自治体もあるため、居住地の均等割額を確認しておくと確実です。
先ほど計算した所得割額と合わせ、計22万円を住民税金額として計算することができます。
《住民税の標準税率》※自治体によって例外あり
市町村民税・特別区民税 | 都道府県民税 | |
---|---|---|
所得割標準税率 | 6% | 4% |
均等割標準税率 | 1,500円 | 3,500円 |
その他の保険料などの計算方法
給与明細を見てみると「健康保険料」や「厚生年金」、「介護保険料」などといった項目で、給与から保険料が差し引かれています。これらはまとめて社会保険料とも呼ばれますが、各保険料はどのように計算して決まるのか、この機会に確認しておきましょう。
社会保険料の計算式
社会保険料は、次のように計算することができます。
各保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2
健康保険、厚生年金、介護保険などの社会保険料は、従業員と会社側の両方が折半して納めます。そのため、自身が負担する額を求める場合は、計算式のように最後に2で割る必要があります。
雇用保険料 = 給与額 × 雇用保険料率
雇用保険の場合のみ、計算式が異なります。雇用保険料率は事業にもよりますが、2018年度は一般事業で0.9%(内従業員負担0.3%)、農林水産・清酒製造事業で1.1%(同0.4%)、建設事業で1.2%(同0.4%)で計算されました。
標準報酬月額とは
会社から支給される基本給と役職手当や残業手当など各種手当を合わせた1カ月の総支給額を、報酬月額といいます。標準報酬月額とは、社会保険料の試算のために用いる基準額のことで、4月から6月までの報酬月額の平均を「標準報酬月額表」の等級区分にあてはめて決定します。
標準報酬月額は基本的に同年の9月から翌年8月までの1年間適用されますが、昇進などで固定賃金が大きく変動した場合は改定されることもあるので、意識しておきましょう。
標準報酬月額の等級は細かく区分されていますが、例えば報酬月額が23万円だった場合、標準報酬月額は24万円。この金額に保険料率を掛けることで、各社会保険料を計算することができます。
各社会保険料の保険料率
各社会保険の保険料率は、次のように設定されています。なお、保険料率は毎年見直しが行われるので、計算する際には最新のものを確認するよう注意してください。
健康保険の保険料率
中小企業に勤める方は、全国健康保険協会が運営する協会けんぽに加入しています。各都道府県によって保険料率は異なり、東京都では9.9%と設定されています。
大企業に勤める方は、各企業が自前で設立した健保組合に加入しているでしょう。保険料率は各組合により異なりますが、7~9%程度に設定されているところが多いようです。
厚生年金の保険料率
厚生年金の保険料率は18.3%と定められています。標準報酬月額24万円の場合、厚生年金保険料は24万円×18.3%÷2=約2.2万円と計算できます。
介護保険の保険料率
40歳以上になると、介護保険料も納付することとなります。協会けんぽにおける介護保険料率は、全国一律で1.73%。各健保組合における保険料率はそれぞれ異なり、概ね1.5%前後で設定されているようです。
転職・退職に伴う税金の扱いと注意点
所得税や住民税などの税金が給与からの天引きとなる会社員の場合、転職・退職する際には納税方法の切替えなどといった手続きが必要になります。いざというときに戸惑うことがないよう、手続き方法や注意点も確認しておきましょう。
所得税の扱い
所得税は1年間の所得を想定して概算し、月割りした額を毎月源泉徴収にて納付する税金です。最終的な所得額が確定するのは12月末となるため、本来であれば納め過ぎている税金は年末調整にて還付されますが、12月以前に退職している場合は自身で確定申告を行わなければなりません。
また、すぐに転職先が決まっているという場合は、前の会社からの源泉徴収票を提出すれば転職先で年末調整による還付を受けることが可能です。
住民税の扱い
住民税の支払いには、給与から天引きされる「特別徴収」と、納付書を用いて自身で納める「普通徴収」とがあります。会社員の方は特別徴収にて税金を納付することが一般的ですが、転職・退職する際には一時的に普通徴収にて納めなければならない期間も発生します。
また、住民税は1月から12月の所得をもとに決定した税金額を翌年5月から翌々年6月の期間に納めるという性質上、転職・退職の時期によっても手続き方法が変わるため、注意が必要です。
1月~5月に転職・退職した場合
1月から5月の間に退職した場合は、5月までの住民税金残額が給料から一括で天引きされます。額もそれなりに大きくなるので、給与明細を見て驚くことがないように、あらかじめ把握しておきましょう。
6月1日時点で次の転職先が決まっていれば、源泉徴収票や雇用保険被保険者証、年金手帳を転職先に提出することで前の会社からの住民税納付手続きを引き継いでもらうことができます。
転職先が決まっていない場合、6月以降の住民税については普通徴収にて納付しなければなりません。自治体から納付書が送られてくるので、金融機関やコンビニなどで支払います。
6月~12月に転職・退職した場合
6月から12月までの期間中に転職した場合、前の会社と転職先との両方に「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を提出すれば、これまでどおり特別徴収にて納めることも可能です。
退職する場合、転職先が決まっていない場合には、退職後の住民税を普通徴収にて分割で支払うのが一般的。また、翌年5月までの住民税を退職するまでに特別徴収にて一括で支払い、その後普通徴収に切替えるという選択肢もあります。
まとめ:何がどれくらい引かれているのか?自身の給料・税金について把握しよう
何気なく目を通している給与明細には、知っておくべき情報がたくさん記されています。
税金や保険料がどれくらい引かれているのか、その額がどのような計算で求められているのかを知ることで、自身の給料に対する意識も変わるかもしれません。
また、失業給付金の申請、未払い給与の請求といった場面でも必要となるため、最低でも2年間は給与明細を保管しておきましょう。
保険商品のご検討にあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり」「約款」などを必ずご覧ください。
本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。
本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。
また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。