がん保険は不要?もったいないと言われる理由や必要性を徹底調査
がん保険に加入を検討している方の中には、このような疑問を持ったことのある方も多いのではないでしょうか。
保険は経済的なリスクの回避が主な目的のため、損得勘定をしても仕方ないところはあります。
今回は「がん保険はもったいないのでは?」と考えている人に対して、がん保険が不要と言われる理由や必要性、どんな人におすすめかなどを深掘りしていきます。
5分で読めますので、がん保険の必要性について一度しっかりと考えてみましょう。
目次
がん保険はもったいない?不要な理由はこの2つ
「がん保険は不要」といわれているのには主に次のふたつの理由があります。
- 「高額療養費制度」により自己負担額を減らすことができる
- 休業すると「傷病手当金」がもらえる
- 高額療養費制度…医療費が一定額を超えた場合にその分が戻ってきます。
- 傷病手当金…病気が原因で休業した場合、会社員や公務員が受け取れ、治療費や生活費に充当することができます。
ケガや病気の際に受けられるその他の公的保険についてはこちらの記事もあわせてご覧ください。
では、がん保険が不要と言われるそれぞれの理由について、さらに詳しく解説していきます。
「高額療養費制度」で高額な治療費を軽減できる
公的医療保険制度により、がんをはじめ病気やけがで治療を受けた際の治療費の自己負担は1~3割に軽減されています。
自己負担額限度額は所得や年齢によって異なりますので一概にはいえませんが、ひとつの目安をご紹介すると、年収350万円~800万円程度の世帯で約8万円強が限度額になります(69歳以下の場合)。
- 高額療養費制度は、公的年金に加入している方であればどなたでも利用できますが、適用されるのは保険が適用される治療のみです。
- 先進医療治療費や差額ベッド代などは適用外となりますのでご注意ください。
- また、お金が戻ってくるのは2~3か月後になりますので、立て替えて支払っておく必要があります。
「限度額適用認定証」を提出すれば立て替える必要なし
このように、公的医療保険制度でも高額な医療費の負担を軽減できる方法が設けられているのです。
「傷病手当金」を治療費や生活に充当できる
会社員や公務員の方は、加入している公的医療保険から、がん治療で休業せざるを得なくなった場合に「傷病手当金」が給付されます。
- 傷病手当金は、給料の3分の2程度の金額で最長1年6か月支給されます。
- なお、休業中も給料が支払われる場合でも、3分の2に満たないときは疾病手当金が差額分支給されます。
がん保険の必要性を罹患率と生存率からチェック
がん保険に加入すべきかを検討する際に、以下の2点を知ることが大切です。
- 生涯でがんにかかる確率がどれくらいあるのか?
- がんにかかった場合、生存率はどのくらいになるのか?
そこで、部位ごとのがんに罹患する確率と、罹患後の生存率について確認していきましょう。
がんにかかる確率を部位ごとに検証
以下に部位ごとの罹患するリスクと、「何人に一人の確率で罹患するのか」をまとめました。
部位 | 性別 | 生涯で罹患するリスク(%) | 何人に1人か |
全がん | 男性 | 65.5% | 2人 |
女性 | 50.2% | 2人 | |
食道 | 男性 | 2.4% | 41人 |
女性 | 0.5% | 194人 | |
胃 | 男性 | 10.7% | 9人 |
女性 | 4.9% | 20人 | |
結腸 | 男性 | 6.5% | 15人 |
女性 | 5.9% | 17人 | |
直腸 | 男性 | 3.8% | 26人 |
女性 | 2.2% | 45人 | |
大腸 | 男性 | 10.3% | 10人 |
女性 | 8.1% | 12人 | |
肝臓 | 男性 | 3.2% | 31人 |
女性 | 1.6% | 62人 | |
胆のう・胆管 | 男性 | 1.5% | 65人 |
女性 | 1.4% | 72人 | |
膵臓 | 男性 | 2.6% | 39人 |
女性 | 2.5% | 41人 | |
肺 | 男性 | 10.1% | 10人 |
女性 | 5.0% | 20人 | |
乳房(女性) | 男性 | ー | ー |
女性 | 10.6% | 9人 | |
子宮 | 男性 | ー | ー |
女性 | 3.3% | 30人 | |
子宮頸部 | 男性 | ー | ー |
女性 | 1.3% | 75人 | |
子宮体部 | 男性 | ー | ー |
女性 | 2.0% | 51人 | |
卵巣 | 男性 | ー | ー |
女性 | 1.6% | 62人 | |
前立腺 | 男性 | 10.8% | 9人 |
女性 | ー | ー | |
甲状腺 | 男性 | 0.5% | 185人 |
女性 | 1.6% | 62人 | |
悪性リンパ腫 | 男性 | 2.3% | 44人 |
女性 | 1.9% | 52人 | |
白血病 | 男性 | 1.0% | 99人 |
女性 | 0.7% | 135人 |
【参考:国立がん研究センター がん登録・統計(2018年データ)】
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
以上より、食道がんや肝臓がん、甲状腺がんなど、男女差が顕著な部位があることがわかります。
現在の年齢別のがん罹患リスク
次に、現在の年齢別のがん罹患リスクを見ていきましょう。
現在の年齢 | 10年後 | 20年後 | 30年後 | 40年後 | 50年後 | 60年後 | 70年後 | 80年後 | 生涯 |
0歳 | 0.2% | 0.3% | 0.6% | 1.2% | 2.7% | 7.8% | 21.9% | 43.6% | 65.5% |
10歳 | 0.1% | 0.4% | 1.0% | 2.6% | 7.7% | 21.9% | 43.6% | ー | 65.6% |
20歳 | 0.3% | 0.9% | 2.5% | 7.6% | 21.8% | 43.6% | ー | ー | 65.6% |
30歳 | 0.6% | 2.2% | 7.4% | 21.7% | 43.7% | ー | ー | ー | 65.8% |
40歳 | 1.6% | 6.9% | 21.3% | 43.6% | ー | ー | ー | ー | 66.0% |
50歳 | 5.4% | 20.3% | 43.2% | ー | ー | ー | ー | ー | 66.3% |
60歳 | 16.2% | 41.1% | ー | ー | ー | ー | ー | ー | 66.1% |
70歳 | 31.7% | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | 63.6% |
80歳 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | 56.6% |
続いて、女性のがん罹患率は以下のとおりです。
現在の年齢 | 10年後 | 20年後 | 30年後 | 40年後 | 50年後 | 60年後 | 70年後 | 80年後 | 生涯 |
0歳 | 0.1% | 0.3% | 0.7% | 2.3% | 6.3% | 12.4% | 21.2% | 32.8% | 50.2% |
10歳 | 0.1% | 0.6% | 2.1% | 6.2% | 12.3% | 21.1% | 32.8% | ー | 50.2% |
20歳 | 0.4% | 2.0% | 6.0% | 12.2% | 21.1% | 32.7% | ー | ー | 50.2% |
30歳 | 1.6% | 5.6% | 11.8% | 20.7% | 32.5% | ー | ー | ー | 50.1% |
40歳 | 4.1% | 10.4% | 19.5% | 31.5% | ー | ー | ー | ー | 49.4% |
50歳 | 6.6% | 16.1% | 28.7% | ー | ー | ー | ー | ー | 47.4% |
60歳 | 10.3% | 23.8% | ー | ー | ー | ー | ー | ー | 44.1% |
70歳 | 15.4% | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | 38.5% |
80歳 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | 29.5% |
男女別のがん罹患リスクを見ると、男性の方が全体として罹患リスクは高くなっていますね。
「がん」と診断されてから5年後の生存率
がんと診断されてから「あとどのくらい生きられるのか?」がやはり気になるところではないでしょうか。
診断後の生存率を知るには、「5年相対生存率」が参考になります。
がんと診断された方のうち5年後に生存している方の割合が、日本人全体(※)で5年後に生存している方の割合と比較してどのくらいの数値となっているのかを表すものです。
※性別、生まれ年、年齢の分布が同じ日本人集団
がんの部位ごとの5年相対生存率を以下にまとめました。
部位 | 男性 | 女性 | 全体 |
全部位 | 62.0% | 66.9% | 64.1% |
口腔・咽頭 | 60.7% | 69.4% | 63.5% |
食道 | 40.6% | 45.9% | 41.5% |
胃 | 67.5% | 64.6% | 66.6% |
大腸(結腸・直腸) | 72.4% | 70.1% | 71.4% |
結腸 | 72.8% | 69.4% | 71.2% |
直腸 | 71.7% | 71.9% | 71.8% |
肝および肝内胆管 | 36.2% | 35.1% | 35.8% |
胆のう・胆管 | 26.8% | 22.1% | 24.5% |
膵臓 | 8.9% | 8.1% | 8.5% |
咽頭 | 81.8% | 81.7% | 81.8% |
肺 | 29.5% | 46.8% | 34.9% |
皮膚(※) | 94.4% | 94.6% | 94.6% |
乳房(女性のみ) | ー | 92.3% | 92.3% |
子宮 | ー | 78.7% | 78.7% |
子宮頸部 | ー | 76.5% | 76.5% |
子宮体部 | ー | 81.3% | 81.3% |
卵巣 | ー | 60.0% | 60.0% |
前立腺 | 99.1% | ー | 99.1% |
膀胱 | 76.5% | 63.0% | 73.3% |
腎・尿路(膀胱除く) | 70.4% | 64.8% | 68.6% |
脳・中枢神経系 | 34.1% | 37.4% | 35.6% |
甲状腺 | 91.3% | 95.8% | 94.7% |
悪性リンパ腫 | 66.4% | 68.6% | 67.5% |
多発性骨髄腫 | 41.9% | 43.6% | 42.8% |
白血病 | 43.4% | 44.9% | 44.0% |
※悪性黒色腫を含む
【参考:全国がん罹患モニタリング集計 2009-2011年 生存率報告(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター,2020)】
この表より、2009年から2011年の間にがんと診断された方の5年相対生存率は、男性が62.0%、女性が66.9%で合計64.1%ということがわかります。
また、部位別に見てみると、皮膚、乳房(女性のみ)、前立腺、甲状腺は生存率が高く、胆のう・胆管、膵臓、脳・中枢神経系は生存率が低い傾向にあります。
どれくらい貯蓄があればがん保険はいらない?
がん保険のメイン保障ともいえる「診断給付金」と、治療費が全額自己負担になる「先進医療にかかる費用」が目安になると考えられます。
「先進医療なし」なら300万円程でカバーできる
がん保険の「診断給付金」は、以下のようなメリットが挙げられます。
- がんと診断されたときに一時金としてまとまった金額を受け取れる
- 使い道が自由なので入院費や手術費はもちろんのこと、通院費や交通費、がん治療のために休業した場合の収入補填などにも利用することができる
診断給付金の金額は、契約時に50万円~200万円の間で決められることが多く、がん治療をこの給付金額でまかなえるとすると、貯蓄が200万円ほどあればがん保険に加入しなくても良い計算になります。
「先進医療あり」ならプラス300万円は必要
200万円から300万円ほどの貯蓄があれば貯蓄から治療費が支払えると試算できましたが、実はその金額は、「先進医療によるがん治療を受けない場合の話」です。
がん治療には、先進医療のように公的医療保険の対象外となる治療方法があり、治療費は全額自己負担になってしまいます。
では先進医療による治療を受けるとどのくらいの費用がかかるのか、一例をご紹介します。
先進医療技術名 | 治療費(平均) |
高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術 | 302,852円 |
陽子線治療 | 2,697,657円 |
重粒子線治療 | 3,089,343円 |
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術 | 678,497円 |
MRI撮影及び超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法 | 107,661円 |
【参考:厚生労働省「令和元年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」】
先進医療の種類によって治療費が大きく異なりますが、数十万円で済むものもあれば、300万円を超えるものもあります。
この表以外にもさまざまな先進医療の治療法がありますが、平均で759,052円の治療費がかかります。
再発や転移の際の費用もまかなえるか
これまでの結論では、600万円ほどの貯蓄があればがん保険は必要がないといえそうですが、実はそれで安心はできません。
がんは再発や転移の可能性が高い疾病です。そのため、一度治療が終わってもまたがんに罹患する可能性があるのです。
その場合の治療費も貯蓄でカバーすることができるでしょうか?
初回のがんの治療費に貯蓄の大半を充ててしまうと、再発などの際の治療費まではカバーできない可能性があります。
また、お金が必要になるのはがん治療だけではありません。住宅ローンの支払いや子どもの教育費など、高額な支出はほかにもあります。
医療保険に加入していればがん保険は不要?
がんの治療費を保障する保険は、がん保険だけではありません。
医療保険も、がんを保障の対象としています。
実際、医療保険とがん保険では、保障範囲がかぶっている部分があり、医療保険でもがんで所定の治療を受けた場合は保障の対象になります。
たとえば、がん保険の場合、入院給付金、通院給付金の支払限度日数がないケースが多いです。
つまり、がん保険では、長期間の入院・通院にも対応することが可能な場合があります。
一方の医療保険では、支払い日数は商品によって60~120日間までなど、上限が設けられているものがほとんど。
がんにかかった時、大抵の人は入院や手術を想像するかもしれませんが、最近では通院のみの治療が可能になっていることも。
医療保険に加入しておけば、がん保険は不要になるケースもあります。
このことを踏まえた上で、自分にとってがん保険は本当に不要なのかどうかを考えてみると良いでしょう。
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がん保険が必要なのはこんな人
がん保険は、基本的にがんにかかった時の治療費を支払えないことに対するリスクヘッジです、
治療費を問題なく支払える人、もしくは他に医療保険でがん特約をつけて保障を準備している人にとっては不要である場合があります。
とはいうものの、基本的にがんの治療については公的医療制度が適用されるため、治療費の負担額は支払いが可能な範囲まで軽減されるケースがあります。
一般的な診療や治療、手術に対して適応されるため、多くの場合まずこの健康保険制度で医療費が軽減される可能性があります。
負担額の限度額は年齢や年収によって異なりますが、例えば…
一例として100万円の医療費に対して自己負担額は約8~9万円ほどに軽減されます。
たとえば、「先進医療」などを受けた場合には、公的医療制度は適用されず、かかった治療費は全て自己負担になってしまいます。
このように、公的医療制度ではカバーしきれない医療費があることも考慮すると、がん保険の必要性が見えてくるでしょう。
がん保険が不要なのはこんな人
がん保険は、不要な人もいれば、必要性を検討した方が良い人もいます。
がん治療の場合、治療費が特に高額になるのは、公的医療制度が適用されない抗がん剤治療や先進治療などを受けた時でしょう。
治療によっては、費用は数千万円にも上る可能性があります。
1000万円以上もの費用を自分ですぐに支払える人は、あまり多くはないはず。
そのため、多くの人は、一度がん保険の必要性を考えてみることをおすすめします。
まとめ
今回は「がん保険はもったいないのでは?」と考えている人に対して、がん保険が不要と言われる理由や必要性、どんな人におすすめかなどを深掘りしていきました。
がん保険は、人によっては不要なケースがあります。
貯蓄があるケースや、医療保険に入っているケースなど、自分で治療費を支払える方法を確保している場合にはがん保険は不要でしょう。
しかし、それだけではカバーしきれないリスクがあることも事実です。
通院が長引いて医療保険の通院保障では対応しきれなくなった場合や、先進医療を受けて治療費が数千万円にも上った場合など、医療費の支払いに苦労する可能性は誰にでもあります。
このことを踏まえた上で、がん保険が不要かどうかを改めて考えてみて下さい。
保険商品のご検討にあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり」「約款」などを必ずご覧ください。
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